田中組神楽車の創建は定かではありませんが、元禄~享保年間(1688-1736)に建造されたと推定される田中組の旧車が、天明8年(1788)に大浜(現碧南市大浜)に譲渡され、大浜中区の稲荷社の祭礼に今も曳き出されています。
この山車は今もほとんど当時のままの姿で、亀崎の山車の歴史を知ることができる貴重なものです。
現在の山車は天保8年(1837)横松(現阿久比町)の岸幕善兵衛を棟梁として建造され、諏訪の立川和四郎冨昌、常蔵昌敬が彫刻を手がけています。
当時の爛熟した文化の粋を極めて造られ、壇箱は立川常蔵昌敬の最高傑作の一つといわれる「蘭亭の庭」で、精緻な彫刻が一際目を引き、「蟇仙人・鉄拐仙人」の彫刻が柔和な表情で壇箱の左右に配されています。
長年の使用で損傷と痛みの激しかった彫刻は、山口県小郡在住の有馬白匠要治師により平成12年(2000)から4年がかりで修復されました。
神楽車の上山からくりの「傀儡師(かいらいし)」は、首から箱を下げた傀儡師人形が箱の上で木偶を操り、さらに場面が展開して「船弁慶」の一場面が演じられます。
これは江戸時代に人気を集めた竹田からくりの古い姿を残した貴重なからくりで、「竹田からくりの生きた化石」と言われるほど文化的価値の高いものです。
大幕は、緋羅紗に「牡丹と唐獅子」の刺繍で、水引は「雲と霞と蝶」の金刺繍です。
追幕は、緋羅紗に「桜と孔雀」の刺繍で、これら幕類の下絵はすべて福田翠光の下絵によるものです。
- ■建造
- 天保8年(1837)
- ■主な彫刻
- 壇箱:「蘭亭の庭」「鉄拐仙人・蟇仙人」立川常蔵昌敬)
- 脇障子:「三国志 阿斗・超雲に張コウ」(立川常蔵昌敬)
- 蹴込み:「唐子遊び」(立川和四郎冨昌)
- ■山車幕
- 大幕:緋羅紗地に牡丹に唐獅子の刺繍(福田翠光下絵)
- 水引幕:雲霞と蝶乱舞の縫いつぶし(福田翠光下絵)
- 追幕:孔雀の刺繍(福田翠光下絵)
- ■からくり
- 前棚:巫女の舞
- 上山:傀儡師-船弁慶