からくり人形を持つ山車は全国的に見られ、その数は200輌以上ある。しかし、そのうち約7割が東海三県にある。東海地方になぜこれほど多くのからくり人形があるのか、その理由はよく分かっていない
この地方のからくりは、大阪の竹田からくりの系統を引くものだと言われる。竹田からくり一座は、からくり人形芝居を引っ下げて各地で興行を行った。
愛知県の山車からくりも初期は芝居仕立で、現在も知立祭や知多半島の上野間祭にからくり人形芝居が伝えられている。今はからくり人形芝居こそ少ないが、面かぶり、文字書き、倒立、綾渡りなどの技は竹田からくりによって始められたものと言われている。
代表的なからくり人形の出し物として、次のようなものがある。
巫女が榊を振ると、前に置かれた釜から湯しぶきに見たてた紙吹雪が吹き出す。
胸の中から面が飛び出し、顔が変わる。浦島、猩々などの筋立てになったものがある。
物が二つに割れて、中から人形や船などが出る。これも様々な趣向をこらしたものがある。
人形が神社に変身する。からくり人形の中では最もダイナミックな変化をする。
人形が逆立ちをする。蓮台の上で逆立ちするもの、木の上で逆立ちするもの、もう1体の人形の肩上で逆立ちするものなどがある。
人形が文字を書く。
人形が上からつるされた平行棒(ブランコ)に、手足を交互にかけながら渡ってゆく。
人形が平行棒につかまり、鉄棒の大車輪を行う。富山県に多い。
人形が何にもつかまらず、数本の杭の上を歩いて渡る。
なお、東海地方のからくり人形の中で、特に優れたものを筆者の好みで(見る側の立場から)挙げると、犬山祭真先の「乱杭渡り」(日蓮上人星下り)、亀崎潮干祭田中組の「傀儡師」(写真101)、高山祭龍神台の「龍神」、大四日市祭の「大入道」である。