愛知県蒲郡市の三谷祭(写真68)の山車は、囃子屋台の前に、先に剣や花飾りをつけた鉾を立てる。海中を練ることから、進行方向と垂直に長大な梶棒をつける珍しい構造を持つ。
三谷祭の4輌のみの形式。
高山祭(写真69)、古川祭の神楽台に代表される屋台(太鼓台)。飛騨各地に分布する。獅子舞の太鼓を屋台としたもの。太鼓台には太鼓打ちが徒歩で従うものが多いが、神楽台では台上につるした太鼓を、両側に乗った2人の人が打つ。
奥三河の北設楽郡稲武町やその周辺の町には小型の二層式の山車で、下層に大きな太鼓を置く形の山車が多く見られる。山を隔てて接する岐阜県恵那郡串原町の串原太鼓の系統を引く「打ちばやし」という太鼓囃子を演奏するための山車で太鼓打ちは徒歩で、太鼓を打ちながら従う。
装飾の少ない簡素なものが多い。
先にも述べたように、船型山車には様々な性格を持つものがあり、東海地方にもバラエティに富んだタイプが多く見られる。
都市型の山車としては、犬山市浦嶋車と美濃市船山車、港町のものとしては愛知県美浜町小野浦の八幡丸や南勢地方の船だんじり、川湊のものでは岐阜県八百津町(写真70)の山車などがある。
東海地方には人形を持つ山、または山から変化したものが多く、純粋な囃子屋台は多くない(山と囃子屋台の違いについては第2章参照)。
尾張では名古屋市鳴海町(写真71)に優れたものがある程度だが、東三河地方(写真72)には単層式の囃子屋台が多く見られる。ただし、この地方では山車よりも、もっぱら花火に力を入れる傾向が強く、豪華なものは少ない。
以上、東海地方の山車の代表的な形式について述べてきた。ここで分類しただけで25種類になるが、この地方の山車の種類はこんな程度ではない。
1輌のみの形式も入れれば、何十種類になるか見当もつかない。このこと一つをとっても、当地方が山車の宝庫といわれている事実を理解していただけるだろう。