東海地方は関西と接しており、様々な形で関西の文化の影響を受けている。特に西濃(美濃西部)、中勢(伊勢中部)など街道で関西とつながっている地域ではその影響が強く、伊賀は文化的には関西圏に属する。
これらの地域には関西を中心に分布する型式の山車が見られる。
近畿地方の北部には京都の祇園祭の鉾を小型化した形の山車が各地に見られる(ここでは二層式で御所車と見送り幕を持つものをこの形式と考えている)。
鉾を立てるもの(鉾)と鉾のないもの(囃子屋台)があり、信仰的な意味ではこれらは異なるが、実際にはその違いはほとんど問題にされていない(明治以降、電線が障害となり鉾をはずしたものも多い)。
代表的な例としては、兵庫県篠山町、福井県小浜市、滋賀県高島郡高島町、三輪だが滋賀県大津市などの山車があり、東海地方では伊賀上野(現伊賀市)の天神祭(写真65)、松阪市の射和祇園祭などに見られる。
大津市、射和のものは人形を置く。
滋賀県長浜市を中心にして、湖東地方、西濃地方に分布する子供歌舞伎の山車。正面に大きな舞台があり、後半分は二層構造になっている。
二層部の上層は「亭(ちん)」と呼ばれ、豪華な楼閣造りになっている。これらの多くは長浜仏壇の技術を背景として、工芸的に優れたものが多い。
西濃地方では不破郡垂井町(写真66)、揖斐郡揖斐川町、養老郡養老町などに見られる。
近江商人の中心地である滋賀県蒲生郡日野町の山車の型式。下層は縦長の直方体型で囃子方が乗る。上層は露天で、毎年新たに人形を作って飾る。車輪は御所車になっている。
日野のほか、滋賀県甲賀郡水口町、近江八幡市浅小井町、三重県鈴鹿郡関町(現亀山市)(写真67)などに見られる。浅小井や関の山車は台輪から上が回輪し、180度方向転換できる構造になっている。日野型ではこの形の方が古い。