東海の山車祭り

第2章 山車の起源 (1/5)

難しい山車の定義

山車、曳山、だんじり、鉾、屋台、あるいはもっと簡単に、山、車など様々な呼び方がある。これらは、本来すこしずつ違うものをさした言葉であるが(第3章参照)、現在ではまったく区別されず、もっぱら地域的に使い分けられている。
愛知県では「山車」、岐阜県の西濃地方では「曳?(ひきやま)」、東濃地方では「だんじり」、飛騨地方では、「屋台」、三重県の北勢地方では「祭車」(主に石取祭車をさす言葉)、南勢地方では「だんじり」、伊賀地方では「楼車」と書いて「ろうしゃ」「だんじり」などと呼ばれている。
この他、犬山祭の「車山(やま)」、津島天王祭の「車楽(だんじり)」など、特定の祭りのみで使われている名前もある。このため私なども調査の際、町ごとに使い分けないと話が通じないことが多く、気を使う。
本稿では、一般的には「山車」と呼び、個別の祭りについては、「高山の屋台」「上野天神祭の楼車」というように使い分けた。

ところで、ここまで何の説明もなく、「山車」と言ってきたが、いったいどういうものを差して山車と言うのだろうか。ここでは改めて考えてみたい。

「祭に使われる車輌で、人が乗って囃子を演奏し、人が引っ張って動かすもの」

これは、誰が見ても山車だろう。しかし、これを山車の定義にして良いかと言うと、そうも簡単にはいかない。
日本の山車の原型である京都祇園祭の「山」は担ぎ山で、人が乗らないので前の定義には入らない。この他にも人が乗らない山車は結構ある。これでは都合が悪い。世間で山車と呼ばれるものには、実に色々な形態のものがあるようだ。

本稿ではそうしたものの中で「神社の祭礼に使われる山車、またはそれに準ずるもの」を対象としている。ここで、わざわざことわるのは、市民祭や商店街のイベント、メーデーにも、山車のようなものが出されるからである。

その一方で神社の祭りに曳き出される車の中にも、木枠を組んだ程度の簡単な車に、太鼓を乗せたものがあって、これらも地元では山車と呼ばれている。三河地方には、このような太鼓車(チャラポコ)が多いが、これも立派な山車であると考える。
ただし、本稿で「愛知県に400輌」などという中に、これらのものは入っていない。調査が難しく、しかも数が多く、数えだすと収拾がつかなくなるからである。
また、さらにややこしいことに、このような簡単な太鼓台と、本格的な山車との中間ぐらいのものがたくさんある。
奥三河(北設楽郡)に多く見られる太鼓山車は、小型で、簡素なものが多いが、人が乗って囃子を演奏するから立派な山車である。


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