このように東海地方には装飾のすぐれた山車はたくさんあるが、もちろん山車祭りの魅力はそれだけではない。
山車を提灯で飾る夜祭りは幻想的で、どこの祭りでもその見どころの一つとなっている。その中で最も美しいのは犬山祭と津島天王祭(写真4)だろう。
これらの祭りでは、山車を飾る数百の提灯に、ろうそくで火が入れられる。一つ一つの灯がゆらゆら振れるろうそくの光の美しさは、平板な電球の光とは比べ物にならない。現在ではどこの地方の祭りでも提灯に電球を入れるのが普通だが、愛知県にはろうそくを使う所が多い。
この地方の山車祭りの呼び物と言えば、何と言ってもからくり人形である。からくり人形の本場は名古屋で、愛知、岐阜の両県でからくり人形を持つ山車が約150輌ある。
からくりの内容は実に多彩であり、人形の踊りを見せるもの、人形が何かの中から出現するもの、人形が素早く変身するもの、文字を書くものなどがある。そして、その中心となるのが、「離れからくり」である。
離れからくりとは、人形が一つの支柱の上に立つのではなく、何本もの取りはずし式の操作棒を作って、倒立、乱杭渡り、大車輪などの曲芸を演ずるもの。からくり人形を出す祭りは多いが、犬山祭、津島秋祭、亀崎潮干祭は特に人形の数が多く、様々なからくりが同時に見られる。
垂井曳?祭(写真5)では子供歌舞伎が演じられる。子供といっても内容は本格的なものであり、役者たちの大胆で華やかな演技は、山車の舞台の狭さを感じさせない。特に女形の男の子たちの色気あるしぐさには驚かされる。
富田鯨船祭(写真6)など四日市付近に分布する鯨船の山車では、はりぼての鯨を使って鯨捕りの演技を行う。鯨船と鯨の格闘は勇壮で、道路を100メートル以上も使って鯨を追い回す。何度見ても飽きない楽しい行事の一つである。