[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][唐獅子]

第133回 唐獅子


亀崎東組「宮本車」
脇障子『獅子の谷落とし』
 唐獅子とは唐つまりは中国から伝わった獅子で、ライオンを想像上で描いた物です。獅子に、特に唐がつけられているのは、古く日本では、猪「イノシシ」や鹿(しか)「カノシシ」を「シシ」と呼んでおり、混同を避ける意味合いから唐を加えて呼ばれました。
百獣の王とされる獅子。古代中国では虎が百獣の王とされてきましたが(講座「龍虎」参照)、後にシルクロードを通じてライオン(獅子)の話が中国へもたらされると獅子が百獣の王として位置付けられ、王の権威の象徴とされるようになりました。
これは、元々、エジプトやインドの王朝で、王の宮殿に王の権威を表し、王を守護する獅子の像が置かれたことに由来します。
思うに、中国には虎は実在の動物としており、空想の霊獣としての獅子に霊的なものを感じたのかもしれません。(ちなみに虎は四神相応思想として西の守護神として位置付けは保って行きます。)
 日本に伝わった獅子は、古く平安宮中で御帳台と呼ばれる寝所の垂れ幕の重しとして見られます。これは、後に神社などにも置かれる、狛犬、獅子へと繋がって行きます。狛犬「コマイヌ」は高麗「コマ」つまりは朝鮮から伝わった犬で、獅子と混同されますが、獅子とは別物です。特徴は角があることです。神社には様々な形体で狛犬・獅子が置かれています。狛犬と獅子の対や両方獅子の対などです。獅子の睨む形相は悪霊を遠ざける霊的な位置付けがされ、神社建築を始め、山車建築などの木鼻で多くの獅子で飾られています。

成岩「大獅子小獅子の舞」
 神事芸能としての獅子舞は獅子の災難除けの思想が取り入れられたものです。獅子に頭を噛んでもらうと災いから逃れられると信じられてきました。知多の山車祭でも半田の成岩や板山、常滑の小鈴谷などで獅子舞が行われています。
 山車装飾としての獅子は幕類や彫刻など多く見られます、構造物としての木鼻獅子はほぼすべての山車に付けられているといっても過言ではないでしょう。幕類、装飾彫刻などの獅子は牡丹との組合せや、手毬との組合せ、また、獅子の子落としといった物語性のあるものまで様々です。こうした組合せを個々に取り上げ、別項で詳しくご紹介する予定です。

唐獅子 各山車の獅子木鼻 など
唐獅子に牡丹 半田亀崎田中組神楽車大幕「唐獅子に牡丹」など 
唐獅子に手毬 東海横須賀北組堂山支輪「獅子に手鞠」
獅子の子落とし 知多北粕谷脇障子「獅子の子落とし」

東海市大田・荒古組「木鼻」

東海市横須賀・北町組「獅子に手鞠」

亀崎田中組「神楽車」
大幕「牡丹と唐獅子」

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