[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][鶴と亀]

第129回 鶴と亀

横須賀・本町組水引幕より
 ことわざに「鶴は千年、亀は万年」とあるように、鶴と亀は一セットの組み合わせで縁起物とされることが多いようです。
婚礼の飾りや画材などでも鶴亀は見られますし、山車装飾でも彫刻「高砂」の鶴亀や幕類の鶴(水引)亀(大幕)など鶴と亀の組み合わせが見られます。鶴亀共に長寿ではありますが、それだけではないようです。その因果関係には諸説あるようですので、それぞれ、ご紹介しましょう。

・諺「鶴は千年、亀は万年」
 この諺はあまりにも有名ですね。その元は中国、前漢代の思想書「淮南子 説林訓」に鶴は千年、亀は万年の寿命を保つ伝説が記されていることからきています。

・能「鶴亀」
 能の演目に「鶴亀」というのがあります。その内容は新春を迎え、唐の玄宗皇帝が月宮殿で宴を行い、そこで鶴と亀の冠を被った舞人が、皇帝の寿命を祝って舞うというものです。
能といえば室町時代以降ですが、話の内容は、中国の唐の時代です。能の流派によっては、夏の禹帝王の設定で演じられます。夏は殷王朝の更に前の王朝で有史以前の伝説の王朝です。ちなみに、この頃の日本は旧石器時代です。

・四神の転化
 五行説(木火土金水の五要素で森羅万象を読み解く説)では南を火性とし、北を水性とします。四神では南は火すなわち日を表し、そこから空を表します。
そうしたことから、空を象徴する、つまりは飛ぶ、朱雀が配されます。(例・古く都の南門を朱雀門といいました。)
北は水で、水中の玄武が配されます。(参考・講座「四神」)この朱雀と玄武が変化したという説です。鳥である朱雀が鶴に、亀と蛇の合体の玄武が亀となって鶴亀の組み合わせが生まれたという説。
 ちなみに東西の青龍と白虎の横軸は双璧を表します。(参考・講座「龍虎」)
南北は縦軸で連続性を表します。例えば系図などの時系列でも横軸は同世代、縦軸は先祖、現代、未来へと繋がります。
 こうしたことから、縦軸の朱雀・玄武が連続性から長寿と子孫繁栄の象徴として実在の鶴亀へと転化して行ったということです。


・浦島伝説
横須賀・北町組水引幕より
 ご存知、浦島太郎の話です。但し、一般的に知られている、昔話の浦島太郎ではなく、元となった話です。(現在、一般的なものは明治以降、文部省によってまとめられたものだそうです。)
 古く、御伽草子に記された浦島太郎の説話です。一般的な浦島太郎の話を踏まえて、ご紹介しますが、先ず、子供たちにいじめられていた亀を助けるのではなく、漁で掛かった亀を助けます。数日後、船に乗った娘が現れ、遭難したといって、自分の住んでいたところまで送って行って欲しいと、太郎に頼みます。
太郎は娘を伴って、娘の住処まで送ります。つまりはここが、竜宮城のわけですが、ここで娘は、自分は先日助けてもらった亀だといい、恩返しにと太郎をもてなします。三年遊んだ太郎は飽きてきて、帰ろうとします。ここで、ご存知、開けてはならない玉手箱ならぬ重箱をもらって帰ります。
帰った所は、太郎が住んでいた所には違いないが、見慣れぬ風景です。腹が減った太郎は、重箱の中は食べ物だろうと、重箱を開けてしまいます。すると、太郎は、お爺さんではなく、鶴になってしまいます。
太郎は、ひどい仕打ちだと思い、娘の所へ飛んでいきます。娘は、太郎が過ごした三年は、実は七百年であり、人間だったら死んでしまう。それが不憫で、千年生きられる鶴になるようにしたといい,太郎は残りの三百年、亀と夫婦になって暮らしたということです。めでたし、めでたし、でもありませんが。ここで、鶴と亀が繋がります。

鶴亀の因果関係は諸説あるようです。鶴亀が乙姫・太郎の三百年共にした夫婦とすると、高砂に鶴亀は何とも、おめでたい?物に思えてきます。

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