尾張横須賀まつり〜公通組八公車〜山車彫刻1

09-07-18更新

前棚部の壇箱は「牛若丸と烏天狗(からすてんぐ)」で、彫刻背面に瀬川治助重光の印刻があります.
この「烏天狗」の制作時期は不明ですが、八公車が出来たとされる文政6年当時は重光4歳であり、この壇箱「烏天狗」はまだ出来ていなかったことになります.

重光の横須賀での他作品は本町組が嘉永2年(1849)に、北町組が元治元年(1864)に彫られています.八公車の「烏天狗」もこの前後の時期に制作されたと考えるならば、文政6年の山車建造から20〜40年後に重光によって「烏天狗」が追加されたことになります.

→彫刻詳細2(支輪彫刻「波龍」)

壇箱「烏天狗」

八公車の檀箱「牛若丸と烏天狗」は欅(ケヤキ)材の白木彫りで、正面やや右に天狗を従えた大天狗の僧正坊、中央やや左には剣を持つ牛若丸と、そして烏天狗が7体配置されています.鞍馬山に預けられた牛若丸(源義経)が天狗から兵法、剣術を習うという有名な場面です.
向かって右側面は母である常磐御前が牛若を抱いて追っ手から逃れる場面だといいます.左側面は刀を構える烏天狗と2名の人物.(題材未確認)
彫刻裏の刻銘から瀬川治助重光の作品であることが確認でき、この『牛若丸と烏天狗』は彼の得意とした題材で、阿久比町宮津北組の前山蛙股などにもみられます.


前面中央部「牛若丸」

前面左側「僧正坊」
 
左側面

右側面

彫刻裏の印刻

「尾州 奇雲堂
瀬川治助作」

「尾州
瀬川治助重光作」

 

鬼板

鬼板と鳥襖には「八公」の文字.

懸魚

「鳳凰」

上山蛙股

「麒麟」

高欄狭間

山車の全周にわたり「梅に鶯(うぐいす)」など8枚の白木彫刻.
作者は不明ですが、ヒノキで彫られており、治助重定の可能性も.

幕板に松の装飾.

八公町内にあった「琴引松」に由来するのでしょうか.