大門組の山車彫刻は他町4輛と比較するとその規模は小さく簡素に作られていますが、近年当町の彫刻師村瀬明により彫刻が追加されました.
前面の前棚彫刻(壇箱)はヒノキ材の白木で彫られた「六玉川」で、瀬川治助重定によるものです.
この白木による壇箱彫刻は、後に圓通車を除く4輛の山車が瀬川重光(二代目治助)により同様の白木彫刻が採用されたことから、横須賀形式名古屋型の先鞭となった作品と思われます.
治助重定の作品は他に高欄幕板部の「波に龍」や鬼板等も治助重定と推定されますが、詳細は不明です.また、圓通車とともにこの山車は治助重光による彫刻の追加はありません.
彫刻の題材は「六玉川(むたまがわ)」です.六玉川とは、古来より和歌で詠まれる歌枕に使われる日本全国にある六つの 玉川、「井手の玉川」(山城),「三嶋の玉川」(摂津),「調布の玉川」,(武蔵)「野田の玉川」(陸奥),「野路の玉川」(近江),「高野の玉川」(紀伊) を合わせて『六玉川(むたまがわ)』といいます. 大門組の前棚彫刻の「六玉川」は、前面と左右の3面に六つの玉川の場面をすべて配しています. この彫刻はヒノキ材の白木彫りで、彫刻裏面と下部に「尾州名護屋 彫物師瀬川治助 藤原重定作」と墨書され、治助重定の作品であることがわかります. |
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高野の玉川正面左側に彫られています.現在の和歌山県高野山に流れる玉川です. |
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野路の玉川正面中央部.現在の滋賀県草津市を流れる川で、萩の名所だったことから別名萩の玉川とも呼ばれ、萩が彫られています. |
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三嶋の玉川正面野路の玉川の右側にあるのが、三嶋の玉川です.摂津国三嶋(現在の大阪府高槻市)の玉川は卯の花が多く咲く事で知られ、別名「砧の玉川」とも呼ばれます. |
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井手の玉川正面右端部. |
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野田の玉川左側面に彫られています.陸奥(現在の青森県)を流れる川で別名「千鳥の玉川」と呼ばれています. |
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調布の玉川右側面.武蔵国(現在の東京都調布市あたりか)を流れる多摩川です.晒布が特産で、彫刻でも川で布をさらす女性が見られます. |
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壇箱正面裏 |