[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][鯉]

第136回 鯉


岩滑西組「御福車」大幕
 鯉は古く、中国では諸魚の長とされ、縁起物とされてきました。また、仙人の乗り物としても、神聖視されてきたようです。
日本でも魚の長として、めでたい物とされ、祝いの宴席で、食されたようです。(海魚の長が鯛)また、錦鯉などは、日本庭園の池では、お馴染みで、古くから、観賞用としても、日本人に親しまれてきました。

・山車装飾の鯉

 山車彫刻や幕類でも鯉が見られます。多くは鯉の滝登りと題したものです。縦長の脇障子の彫刻は滝の流れと相まって、調和が取れた題材となっています。また、常滑保示保楽車水引は鯉の滝登りの激流とは異なり、清流に泳ぐ鯉が描かれ、写実的で、ゆったりした感じがします。


乙川西山「神楽車」持送り

旧常滑保示「保楽車」水引
鯉の滝登り
南知多山海西村山車脇障子 美浜布土大池山王車脇障子
半田乙川西山神楽車持送り 半田岩滑西組御福車大幕
清流に泳ぐ鯉
常滑旧常滑保示保楽車水引

・鯉の滝登り
 鯉の滝登りで、日本人に最も馴染みなものが、端午の節句に飾られる、鯉登りです。子供の無事な成長を願う端午の節句に、立身出世を祈る、鯉幟が掲げられました。
 立身出世と鯉の滝登りとの関係はなんでしょう。中国の歴史書の後漢書、李膺伝には黄河の中流に竜門滝といわれる、激流があり、滝の下には鯉が集まるとされ、その激流を登った鯉は竜になると、記されています。
竜門滝は、その鯉はまったく上れないほどの激流で、そうした逸話ができたようです。

山海「西村」脇障子
 中国には「六々変じて九々鱗となる」という諺もあるようです。六々は6×6で、つまり36枚の鱗(種類によって異なるが実際に大体36枚)がある鯉で九々(81枚)の鱗が竜です。
 魚でも鯉は髭があり、龍に通じるような感じもします。龍は想像上の動物ですが、鱗は鯉のようだとされています。
 また、中国古代王朝での科挙試験(官吏登用試験)に合格したものだけが通れる門が竜門といわれたそうです。後に、立身出世の関門を登竜門と呼ぶようになったということです。

・鯉料理

 鯉は「精がつく」「肺病に効く」「産後の滋養強壮に良い」と昔から言われていました。現代医学も進歩し、その研究によれば、実際、漢方薬としての効果効能があるようです。
(アトピー肌の改善・滋養強壮・腎炎によるむくみとりの特効薬・血液循環や肝機能の改善・中性脂肪の抑制・頭痛・冷え性・肩こりなど)

・鯉の生命力
 鯉は他の魚に比べ生命力も強いといわれます。以前、奉仕していた神社で、神饌として鯉をお供えしていましたが、業者から納品されるときは、もちろん生きています。神饌として三方に載せるときは、新鮮さを見せるため、鯉の口と尾を麻生の紐で寄せて縛り、あたかも飛び跳ねてるように飾りますが、先ず、お酒を飲ませて、酔わせます、
それでも、元気で、鯉の頭をコーンと叩くと、脳震盪を起こし、静かになります。その隙に、縛ってしまって、夜と思わせるために、目に紙を張ってごまかします。
 その後、気づいた鯉は縛られて、動けません。確か二時間ぐらいの祭典だったと思いますが、お祭が終わって、鯉の神饌を下げてきて、結んだ麻生をチョキンと切ると、また、ばたばたしだしたのを覚えています。
まあ、その後は、神様のお下がりとして、鯉料理で頂いたわけですが、あのまま、水に戻したら、元気に生きたでしょうね。ある年の祭典中、儀式で鯉をお供えしてるとき、ホコホコと動いて、今にも飛び出しそうで、ひやひやした記憶もあります。

(鯉といえば、鯉に乗った仙人として、琴高仙人がありますが、この項では鯉単独で紹介していますので、別項で紹介する予定です。)

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