[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][唐獅子と手毬]

第135回 唐獅子と手毬

 山車彫刻の唐獅子で手毬に戯れている物が多く見られます。唐獅子に牡丹は百獣の王と百花の王との組合せでしたが、唐獅子と手毬との組合せの関係は何でしょう。
その由来は、神社の前に置かれている狛犬・獅子に見ることが出来ます。先の項で狛犬・獅子には様々な種類、組合せがあるとお話しましたが、そうした中でも両方とも獅子のもので、手鞠を持った獅子が見られます。
手鞠を持つのは一匹で、もう一匹は子獅子を持っています。両方獅子の物は中国を起源に持ちます。(狛犬は高麗犬で朝鮮が起源)中国の寺院や霊廟などにも同様の獅子が置かれています。
 獅子が持つ手鞠には、一説には、中国古来の求婚の風習からきているようです。中国では古来、女性が男性に求婚する際、女性は相手の男性に手毬を渡したそうです。男性が手毬を受け取ると婚約成立となったわけです。今でいう婚約指輪が鞠だったということでしょうか。
 こうして獅子を見ると、手毬を持った獅子が雄獅子(父獅子)で対の一方が雌獅子(母獅子)で二匹はつがい、つまりは夫婦となり、雌獅子が手に持っているのが子獅子となるわけです。
 上半田北組唐子車の蹴込「唐獅子に手鞠」などは中央に手毬の房紐を加えた獅子(父獅子)、左に中央の獅子と同様の大きさの獅子(母獅子)、右に小さい獅子(子獅子)と同様の配置が見て取れます。
 こうして見ると、怖く険しい表情の獅子ですが、夫婦獅子と子獅子で家族の獅子が描かれた、微笑ましい図柄にも思えます。手毬だけで、考えても、手毬紋はその丸形から、家庭円満を表しますから、夫婦子獅子に手毬は家庭円満のおめでたい図柄にも思えてきますね。
 しかし、手毬が見られる獅子のすべてが、こうした配置ではありませんし、中国の求婚の風習を意識した物とも思えませんから、手鞠と子獅子を持った対の獅子が中国から伝わり、そこから、手毬と獅子の組合せが定着していったようです。

上半田北組唐子車
蹴込「唐獅子に手鞠」
初代彫常

東海市横須賀
北町組
支輪

武豊富貴本若車
檀箱「牡丹に唐獅子」
瀬川治助重光作

半田下半田北組唐子車蹴込「獅子に牡丹に手毬」初代彫常
半田西成岩彦洲組日之出車蹴込「牡丹に唐獅子に手毬」 岩田冬根作 昭和26年(1951)
常滑旧常滑北条神明車蹴込「唐獅子に手鞠」二代目彫常昭和38年
常滑坂井松尾車檀箱「獅子に手鞠」作者不明
美浜上野間越智嶋組蹴込「獅子に手鞠」持送り「牡丹」
武豊長尾市場神宮車蹴込「牡丹唐獅子親子に手毬」初代彫常
武豊長尾玉貫玉神車檀箱「唐獅子に牡丹に手毬」岸本観治平成2年
武豊富貴市場天王丸蹴込み「唐子に手毬に唐獅子」持送り「牡丹」

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