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山車の骨組み部分の堂山を覆い、飾る水引幕と大幕ですが、それぞれ、様々な装飾が見られ、山車を飾っています。 水引と大幕の意匠が関係ないものもありますが、水引と大幕を関連付けた意匠もあります。同一の下絵によるものや、元々あった水引の図柄に対し、大幕の装飾を入れたものまで、様々です。 今回は、水引と大幕で組み合わせた意匠で飾った山車を同一場面の意匠と関連付けてご紹介しましょう。 ・龍と鳳凰 半田亀崎石橋組青龍車 水引「鳳凰」 大幕「龍」 龍と鳳凰、古く中国では龍は皇帝、鳳凰は皇后の象徴とされて、宮殿には龍と鳳凰の組合せの装飾で飾られました。 同一場面では、亀崎西組花王車の大幕の火炎太鼓や長尾上ヶ宮本車の壇箱「太平楽、楽人」にみられる二つの火炎太鼓には、それぞれ龍と鳳凰がみられます・ ・龍と虎 半田亀崎中切組力神車 水引「龍」 大幕「虎」 古く、中国では龍と虎は強者の双璧とされてきました。中切のものは越前守岸駒による同一下絵で、その組合せは意識した物と思われます。 同一場面では、亀崎東組宮本車の壇箱や知多岡田里組日車の壇箱に「竜虎」の彫刻が見られます。 ・牡丹に蝶 半田亀崎田中組神楽車 水引「蝶」 大幕「唐獅子に牡丹」 歌舞伎など石橋獅子では、蝶が飛び牡丹が咲き乱れる中を獅子が舞い踊る物です。また、中国唐の文宗の時代、宮中で牡丹が満開になり、黄白の蝶が群がってきたので、それを捕まえると、すべて金になったという伝説もあります。そういえば神楽車の水引の蝶も金色ですね。 田中のものは福田翠光による同一下絵で、その組合せは意識した物と思われます。 山車装飾として蝶の図柄は珍しく、同一場面での判例はありませんが、和服や焼き物などにも見られる図柄です。 蝶について、補足しますと、平家の紋としても用いられ、源平合戦の折、壇の浦で入水した平家の姫君の魂が蝶になった話もありますね。田中組の上山からくり人形「傀儡師」による船弁慶では平知盛の亡霊が現れますが、知盛の胴にも蝶が見られます。 |
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・御簾と雅楽器 半田亀崎西組花王車 水引「御簾」 大幕「雅楽器」 亀崎西組花王車の水引と大幕は、壇箱「太平楽人」を彫った立川和四郎富昌が、壇箱との調和を意識し、指示したといわれる月僊による同一下絵です。 宮殿の中から御簾ごしに、宮庭の雅楽の宴を眺めるような感じです。 御簾と雅楽器という組合せの図柄はありませんが、その調和により、ここに紹介します。同様に同一場面での判例もありません。 ・龍と宝珠玉 半田亀崎東組宮本車 水引「注連縄」 大幕「宝珠」 半田亀崎東組宮本車は、現在は注連縄の水引と宝珠の大幕ですが、古い物は水引が龍でした。宝珠は龍が好む珠とされ、画材でも珠を持った龍が描かれます。 同一場面では岩滑新田の大幕「龍の珠取り」などがあります。(亀崎の他の四山車の兼ね合いで紹介させていただきます。) ・波に千鳥 半田下半田中組祝鳩車 水引「千鳥」 大幕「波」 波に千鳥は古くから和服や焼き物などに見られる図柄です。半田下半田中組祝鳩車の水引の千鳥と大幕の波の下絵は池上秀畝による同一下絵です。 同一場面では同じく祝鳩車の蹴込みに「波に千鳥」が見られます。夏にカキ氷屋さんで掲げられる、波に千鳥に氷の字が描かれた、幟は、ご存知な方も多いはずです。 ・鶴と亀 半田成岩東組旭車 水引「鶴」 大幕「亀」 半田下半田南組護王車 水引「鶴」 大幕「亀の房飾り」鶴と亀は、長寿の象徴として、その縁起のよさから、婚礼の飾りなどにも見られます。 半田成岩東組旭車、半田下半田南組護王車共に、元々あった鶴の水引に対し、後に、付けられた大幕の亀ですが、水引との調和を考えた物と思われます。 同一場面では半田成岩北組成車前山太平鰭などに見られる「高砂」には鶴と亀が見られます。 ・龍と鯉 半田岩滑西組御福車「波に龍」「鯉の滝登り」 鯉は龍の子といわれます。その所以は、中国の龍門の滝をいう激流を登った鯉は龍になるという伝説からきています。 半田岩滑西組御福車のものは、元々あった龍の水引に対し、後に、付けられた大幕の鯉の滝登りですが、水引との調和を考えた物と思われます。 山車彫刻では、鯉の滝登りはありますが、龍と鯉を描いた物はありません。 江戸時代のからくり人形の解説書「機巧図彙」には龍門滝という、鯉が滝を登ると龍になって現れる、からくりが紹介されています。 |
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