[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][彫刻の題材〜八岐大蛇]

第109回 彫刻の題材〜八岐大蛇

武豊長尾部・下門組「八幡車」壇箱
 日本神話でお馴染みなものの一つに「八岐大蛇」があります。須佐之男命が登場する話です。講座でも紹介した「天之岩戸」では乱暴な神様ですが、この「八岐大蛇」では英雄神として描かれています。
 山車彫刻では須佐之男命が剣を大蛇へ切りつける場面が画かれていいます。「八岐大蛇」は「天之岩戸」に続く話です。
 高天原で乱暴を犯した須佐之男命は高天原を追放され出雲国へ下ります。川があり、上流からは箸が流れてきました。上流に人の生活の営みがあるのを察し上流へ向かいます。すると老夫婦と娘が寄り添い泣いていました。須佐之男命が問うと、
亀崎・石橋組「青龍車」
脇障子 『須佐之男命』
乙川・南山「八幡車」
脇障子『奇稲田姫』
 「私は出雲の国津神、脚摩乳(あしなずち)といい妻は手摩乳(てなずち)、娘は奇稲田姫(くしなだひめ)といいます。毎年、大蛇が現れて田畑を荒らし、村人を殺していきます。大蛇へ使いを出したところ、娘を差し出せば悪さをしない。といわれ、仕方なく娘を差し出すことにしたのです。今日は大蛇が来る日で、娘との別れを悲しみ泣いていました。」と話します。
 須佐之男命は大蛇退治を申し出、無事大蛇を退治したら娘を嫁にもらうことを約束しました。どのような大蛇か問うと、体は一つだが頭と尾は八つに別れていて、体にはコケが生え、背は山と谷が八つあるほどの大きさということ。一計を案じた須佐之男命は奇稲田姫を櫛に変え自分の頭へ付けました。(このことから櫛名田比売の字も当てられます)そして垣根を作り、そこに八つの門を設け、門の先には強い酒を入れた大甕を置かせます。そこに現れた大蛇、門の先に置いてある酒甕に目をつけ酒を飲み干し、寝込んでしまいます。隙を覗っていた須佐之男命は大蛇に切り付け殺し、見事大蛇を退治しました。大蛇の体の中からは見事な剣が出てきました。この剣が三種の神器ほ一つ天叢雲剣です。無事大蛇を退治した須佐之男命は奇稲田姫と結婚しました。
 八股の大蛇の話は川の氾濫を表しているともいわれます。大蛇の背が山や谷と表し、尾が八つというのはいくつもの支流がつまり、頭が八つのというのは大きな川が分かれていることを表しています。奇稲田姫というのが字からも分かるように田と稲ですね。つまり川が氾濫し田や稲をだめにしてしまうということ。須佐之男命がした大蛇退治は大蛇を川に見立てるなら治水工事をしたということですね。垣根や門は堰や水門を連想させます。甕の酒は稲米と関係あります。尾から出てきた剣は剣など金属の原料、砂鉄が採れたことを表しています。
<主な八岐大蛇の山車彫刻>
・長尾部下門組八幡車 壇箱
・亀崎石橋組青龍車 脇障子
・乙川南山八幡車 脇障子
・上半田北組唐子車 脇障子
・板山日役組神力車 脇障子
・大谷奥条東桜車 脇障子
・阿久比横松横社 脇障子
 などがあります。長尾部下門組のものは壇箱では唯一で壇箱という広い空間を生かし、側面には脚摩乳・手摩乳も彫られています。多くの脇障子のものは左右二面の内一面だけが須佐之男命の大蛇退治の場面でもう一面は大和武尊となっています乙川南山のものは二面とも八岐大蛇で須佐之男命の大蛇退治ともう一面には奇稲田姫が彫られています。

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