[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][彫刻の題材〜蜃(続・蜃気楼)]

第103回 彫刻の題材〜蜃(続・蜃気楼)

知多市岡田・奥組「風車」持送り
 前項で蜃気楼は大蛤(おおはまぐり)の仕業と紹介しましたが、他説には蜃「しん」という霊獣の仕業とされます。この霊獣「蜃」は極めて龍に似ているといわれます。蜃の文字も(たつ)と(むし)で構成されていますから、その意味が伺えます。
 龍と極めて似ているわけですが、蜃の特徴は口から気を出していることです。こうして見ると蜃も龍の一種ということになりますが、社寺建築の彫刻では気を吐いている龍を特に蜃として分類している様です。
 こうしたものは水とか火とかいわれまますが、結局のところ「気」を吐いているとされているようです。さて、知多の山車彫刻の蜃気楼は大蛤によるものの題材でしたが、こうした蜃によるものはないかと探してみましたら、知多市は岡田奥組の山車「風車」の持送りにありました。某書籍では「水吹き龍」と紹介されています。上記の説から考えるとこれは蜃といえそうです。確かに水のようにも見えますが、口からカーブを画いて上に上がっています。水という液体よりも気という気体の方と考えた方が自然のような気がしますが、みなさんいかがでしょうか。
・ 水を吐く龍について一考察
 水を吐く龍、これはどこからきたものでしょうか。確かに神社などの手水舎(手を清める建物)などの水桶には龍の飾りがあって口から水が流れている物もあります、(そういえばお風呂でライオンの口からお湯が出るのなんてあったなー。(笑)
 竜神様というと水を司るとされます。龍は雲を呼び雨を降らす、ということから来ているわけですが、こうしたことが気を吐く蜃と混同されたのではないかと思います。龍の中でも水を司るのは翼を持つ飛竜(応龍とも呼ばれる)とも言われています。龍、飛龍については別項で詳しく紹介して行く予定です。

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