[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][彫刻の題材〜近江八景]

第98回 彫刻の題材〜近江八景

三井の晩鐘 岩滑新田平井組「神明車」
堅田の落雁 宮津南組「南車」
粟津の晴嵐 岩滑新田平井組「神明車」
矢橋の帰帆 乙川南山「八幡車」
比良の暮雪 岩滑新田平井組「神明車」
石山の秋月 宮津南組「南車」
瀬田の夕照 乙川南山「八幡車」
 近江八景とは近江の国(滋賀県)琵琶湖南部の湖畔にみられた八つの景勝です。欄間彫刻などでよく見られる題材です。近江八景は中国の北宋の宋迪(そうてき)が描いた「瀟湘八景」(平沙落雁、遠浦帰帆、山市晴嵐、江天暮雪、洞庭秋月、瀟湘夜雨、煙寺晩鐘、漁村夕照)を模して明応九年、近衛政家が選定したといわれます。三井の晩鐘、唐崎の夜雨、堅田の落雁、粟津の晴風、矢橋の帰帆、比良の暮雪、石山の秋月、瀬田の夕照の八つです。
 山車彫刻では半田乙川南山堂山蟇股や知多北粕谷壇箱、半田成岩東組壇箱蟇股、半田岩滑新田平井組堂山蟇股、阿久比宮津南組壇箱蟇股、常滑瀬木壇箱猫足などに見られます。八仙人の様に八つあり、堂山蟇股など納まりがよく、古くから用いられた題材です。
 半田乙川南山堂山蟇股や知多北粕谷壇箱(亀崎西組旧車)は塗りですし、半田成岩東組と常滑瀬木壇箱猫足は素木ですが夫々上半田の旧車のもので東組は北組(弘化年間)瀬木は南組(天保年間)です。

分割配置された近江八景
 半田乙川南山や半田岩滑新田平井組のものは堂山蟇股、半田成岩東組や阿久比宮津南組のものは壇箱蟇股という八面の空間に夫々配置されています。
 常滑瀬木壇箱猫足も斗形蟇股様の猫足(講座猫足参照)で八面に同様に配置されています。これらは個々に配置され夫々の風景の判別が容易です。

統一配置された近江八景
知多北粕谷のものは壇箱という形態上、一面に統一して配置してあります。一面に配された関係で判別がしにくいです。欄間彫刻では一面に彫られますが、山車彫刻では珍しいと言えるでしょう。
知多市北粕谷
壇箱
個々の八景の特徴
・ 三井の晩鐘(みいのばんしょう) 寺院、鐘楼があります(三井寺です。)
・ 唐崎の夜雨(からさきのよつゆ) 鳥居と社殿があります(唐崎神社です。)
・ 堅田の落雁(かただのらくがん) 浮御堂があります。(水上に建つお堂、
満月寺です。)
・ 粟津の晴嵐(あわづのせいらん) お城があります。(膳所六万石の膳所
城です。)
・ 矢橋の帰帆(やばせのきはん) 帆掛け舟があります。
・ 比良の暮雪(ひらのぼせつ)  山があります。(比良山です。)
・ 石山の秋月(いしやまのあきづき) 京都清水の様な舞台があります。
(石山寺です。)
・ 瀬田の夕照(せたのせきしょう) 橋があります。(瀬田川に架かる唐橋
です。)
 これらが近江八景の凡その特徴です。蛇足として 近江八景を模して半田八景や常滑八景なども選定され地元の画家による絵などが残されています。
nova注:唐崎の夜雨の画像が用意出来ませんでした.後日追加します.

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