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第88回 幕上格子

上半田・北組「唐子車」 横須賀「大門組」
 幕上格子(まくあげこうし)とは山車の堂山部に掛けられた大幕を上げるために付けられている格子です。幕を跳ね上げることからハネ格子とも呼ばれます。単に格子とも呼ばれることもあります。
 知多型では主に人が出入りする後部や一部(上半田、大谷など)では両脇部分にも付けられます。両脇の物は古く多く見られたようですが現在は外してしまった山車が多いようです。(この格子が有ると幕を下ろした時出っ張って見栄えが悪いのも外された理由の一つです。)
 名古屋型では多くの山車が前後左右に付けられています。一部(横須賀、大野・橋詰など)では正面前部には無い物もあります。こうした山車は前面全部が格子で覆われています。この幕上格子の役目は山車の後部は人の出入りのためです。大谷などでは曳き廻しの時は幕を下ろします。両脇などは開けることによって囃子が良く聞こえるようになりますし、通気性も良くなります。
・幕上格子と蔀戸
上半田・北組「唐子車」
 さてこの幕上格子、蔀戸(しどみと)と混同されることがありますが、蔀戸とは古く寝殿造の建物や現在では神社の社殿などで見られる戸です。特徴は上げる時は上の屋根から吊り上げられた金具に引っ掛けて止めることと、下げた時は柱と柱の間にはまり込み壁となる点です。
 山車の幕上格子は単なる格子の骨組ですし、下げても柱と柱の間にはまり込むことなく、上記にも書きましたが出っ張り不自然です。建築上では蔀戸とは異なり、幕上格子は山車建築独自のものです。
・ 幕上格子の名称
上半田・北組「唐子車」
 一般に幕上格子という名称は使われていないと思います。ハネ格子とか単に格子と呼んでいる山車組がほとんどだと思います。幕上格子の名称は山車の建築仕様書などに見ることができます。岩滑義烈組の山車新築設計並仕様書(半田市誌祭礼民俗編)を例に見ると、「本設計ニ記載ナキ輪ト真棒堂山間格子並ニ幕上格子梶棒彫刻物ハ受負以外トス」とあります。「幕上格子」は堂宮大工の建築上の用語で「ハネ格子」は俗称といえるでしょう。
今回の講座では表題に「幕上格子」を使いました。

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