[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][彫刻の題材〜宝づくし]

第83回 彫刻の題材〜宝づくし

 「宝づくし」は様々なおめでたい縁起ものを集めた図柄です。山車彫刻にも様々な宝物が彫られています。個々の宝物は一定してはいませんが葛飾北斎の一筆画譜に掲載されている十の宝物を解説し、山車彫刻に見られる宝づくしを紹介しましょう。

・雨龍「あまりゅう」
 中国における想像上の動物。雨を起こすといわれます。竜の一種でとかげに似ていますが、大形で、角がなく、尾は細く、全身青黄色とされます。
・霊芝「れいし」
 万年茸ともいわれます。サルノコシカケ科のきのこ。乾燥しても原型を保ち、腐らないことから名前の由来があります。古くから縁起物として珍重され、表面をみがき床飾りなどに用いられてきました。
・ 延命袋「えんめいぶくろ」
福の神の持っている、宝の入った錦の袋で腹部が膨れ、口がくくられています。長寿の縁起物です。

・槌「つち」
 打出の小槌―振れば何でも思うままに出せるという小さな槌です。彫刻の七福神の大黒天も持っています。

・鍵「かぎ」
 錠の穴に指し入れ、開閉する金具。彫刻では千両箱もあります。

・宝珠「ほうじゅ」
 宝とすべき玉。つまり宝石のことです。玉石混交とのことわざがあるように、古くは高価な石は玉といい、何処にでもあるものを石といって区別されました。山車の高欄の擬宝珠もこの形に由来します。

・家久連笠「かくれがさ」
 かぶると体が見えなくなるという想像上の笠。災厄から身を隠す、つまり災厄から逃れられるとのことから縁起物とされてきました。

・七宝「しっぽう」
 七宝焼―銅または金、銀などを下地にして、面にくぼみをつくり、そこに、金属の酸化物を着色材として用いた透明または不透明のガラス質の釉(うわぐすり)を埋め、それを焼きつけて種々の模様を表し出したもの。七宝の名は、仏典に七種の金属、宝石類を七宝と呼んだところによります。

・巻物「まきもの」
 書や画または文章などを書いた横に長い紙を、表装して軸に巻いたもの。彫刻の福禄寿も持っています。

・ 吉丁子「きちぢょうじ」
 丁子―フトモモ科の常緑高木。モルッカ諸島原産で、アジアの、主に熱帯で広く栽植されていそうです。つぼみを乾燥させたものを丁字、または丁香といい、古来、有名な香料の一つで、紀元前からギリシアや漢に知られ、日本では正倉院御物にみられます。古くは高価なものだったようです。

山車に見られる「宝づくし」
乙川浅井山「宮本車」壇箱猫足
山車彫刻では岩滑西組御福車の壇箱蟇股や乙川浅井山宮本車の壇箱猫足などに見られます。彫刻ではありませんが亀崎石橋組青龍車 前壇四本柱も宝づくしです。これは柱の装飾そのものが七宝です。部分的には上半田北組唐子車壇箱「三韓征伐宝物受取」の中央の台には宝が盛られています。また、同様のものが長尾馬場区長北車壇箱「七福神」にも見られます。他には見えにくい部分ですが支輪、皿天(以後別項で解説)などにも彫られています。
槌,家久連笠,巻物の画像は岩滑西組「御福車」の壇箱蟇股で亀吉氏に提供いただきました.

先ほどのページに戻ります   [尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][彫刻の題材〜宝づくし]