[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][天之岩戸]

第37回 彫刻の題材『天之岩戸』

天之宇受売命
下半田中組祝鳩車
  山車彫刻の題材は実に様々なものがありますが今回は日本神話の中から「天之岩戸」を紹介しましょう。この天之岩戸は下半田中組祝鳩車岩滑新田奥組旭車板山大湯組花王車の壇箱や常滑市場字常磐車の脇障子に彫られています。
 この神話は高天原を治めていた天照大神が弟神である須佐之男命の悪行に恐れをなして天之岩屋に隠れてしまいます。太陽神である天照大神が天之岩屋に隠れてしまいましたから、闇の世界となってしまいます。こまった他の神々達は知恵をしぼってなんとか天照大神を天之岩屋から出てきてくれるようにします。山車彫刻に見られるのはちょうどこの場面です。
 壇箱の中央、桶を伏せた上で踊っているのが天之宇受
布刀玉之命板山大湯組花王車
売命(あめのうずめのみこと)です。この踊りを見て神々が大笑いします。岩屋に隠れた天照大神は自分がいなくてこまっているはずなのになぜ神々達は笑っ ているのだろうと岩屋の中から伺います。他の神々はあなたより尊い神が現れたので笑っていると答えます。その時、天照大神に鏡を見せます。その尊い神(鏡に写った自分)を見ようと顔を覗かれたときに天之手力男命(あめのたぢからおのみこと)が岩戸を押し開け天照
常滑市場字常磐車の脇障子
大神をひっぱり出します。布刀玉之命(ふとだまのみこと)が岩屋に注連縄を張ってしまいます。結界を張って中に入れなくするためですね。こうして再び明るい世界となったという物語です。
 だいぶ省略しましたがだいたいこういうお話です。壇箱の奥で岩戸をこじ開けているのが天之手力男命で中から光が漏れています。壇箱右手で注連縄を持っているのが布刀玉之命ですね。
 神話は色々読み解き方ができます。自然現象でいえば日食が起こったとか、人間社会でいえば政治的支配者が隠れてしまって政治が乱れたとか、宗教的(精神世界的)でいえば以前書きましたが心には直霊(なおひ)と枉霊(まがつひ)があると書きました。大人になるにつれて自己中心的な心(枉霊-須佐之男命)になってくると周りを大切にする心(直霊-天照大神)が隠れてしまう。子供の頃の純粋無垢な心が失われてしまうということです。そうなると性格も暗くなってしまいますよね。今の自分は本当の自分ではない。そうしたこといから自分の素直な心を呼び覚ますと性格も明るくなってきますよね。
 天之岩戸神話にはこうした奥深さが秘められていると思いますが皆さんいかがでしょうか。この神話は天の岩戸開きとか天の岩屋、天の岩屋戸隠れなどとも言います。こうした話を彫刻の題材にしたのは心の教育の意味もあったのかも知れませんね。

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