[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][山車彫刻〜木鼻]

第12回 山車彫刻〜木鼻

 山車を装飾する彫刻はたくさんありますが、一台の山車に最も多く付けられているのが木鼻「きばな」です。知多型の山車には30個近くの木鼻が付けられています。木鼻とは元々「木端」で木の端を意味します。
 山車彫刻では柱と柱の上部をつなぐ虹梁の端、十文字に組み合わせた突き出た部分に付けられます。古くは虹梁と一体になっていましたが、現在では別々で虹梁の端に取りつける形の木鼻がほとんどです。古い一体型の木鼻は塗の物が多く唐草を図案化した文様が彫られ、中には牡丹や波、雲もあります。
 こうした木鼻を拳鼻「こぶしばな」とも呼ばれます。現在多く見られる木鼻は唐獅子が彫られ、獅子鼻「ししはな」とか木鼻獅子「きばなじし」とか呼ばれます。また、山車によっては獏と言う霊獣が彫られ、獏鼻(ばくばな)とも呼ばれます。獅子や獏の木鼻は素木の物が多いですが塗の彫刻の山車にも見られます。
 さて、こうした獅子の木鼻は装飾としての意味もありますが、守りとしての霊的な意味合いもあると思います。悪いことは外から来る悪霊によってもたらされるという考え方がありました。魔がさすなんて言葉もありますが、神聖な山車を悪霊から守るため四方八方に取りつけられ睨みをきかせているのが獅子鼻だと思います。
 神社にある狛犬、獅子と同じ様なものではないでしょうか。神社の狛犬、獅子ではないですが山車によっては口の開いたものと閉じたものと違った表情の獅子鼻が取りつけられているます。阿吽(あうん)と呼ばれる左右対称の表情で力神などにも見られます。一つ一つの獅子の顔の表情を見て回ってみるのも面白いかもしれませんね。
乙川・宮本車 大足・蛇車 亀崎・青龍車

(平成10年9月18日 祭吉)

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