No.9 |
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尾州乙川村 |
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最近祭りに凝っている呉服屋の鶴爺と大工の源さん、御隠居と連れだって乙川の祭りにやってきたのだった. いつも御隠居に知ったかぶりな話を聞かされ、面白くない鶴爺と源さん. 密かに『終わりの出汁祭り』なる怪しい絵草紙で必死に予習をしてきたのだが、果たしてその効果は.... |
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源さん | 「御隠居、乙川の祭りは何度も来ているから、今日は私らが案内しますよ」 |
鶴爺 | 「そうそう、乙川は庭みたいなもんさ」 |
御隠居 | 「お前らに教えて貰うほど落ちぶれちゃいないが、そんなに言うならこの浅井山からお手並みを拝見しようじゃないか」 |
鶴爺 | 「よしきたっ!この御車の壇箱は『竹林の七賢人(ちくりんのしちけんじん)』といいましてね....(以下略) |
源さん | 「そうそう、中国のかしこい爺さんの物語さね」 |
御隠居 | 「お前さんたちの言うことはそんな程度だと思ったよ.いったいどこでそんな大嘘を覚えてきたんだい.お前らも馬鹿だねぇ」 |
鶴爺 | そ、そんな....だって『終わりの出汁祭り』じゃちくりんのしちけんじんだと..... (いきなり出鼻をくじかれ、動揺を隠せず口ごもる鶴爺であった) |
源さん | 「では、これは一体何なんで?」 |
御隠居 | 「教えて欲しいかい?」 |
源さん | 「そりゃぁ、もう是非」(御隠居が自信たっぷりなので、源さんも不安に..) |
御隠居 | 「これは『チクリの七検事(ちくりのしちけんじ)』というんだぞ.よーく覚えとくんだな」 |
鶴爺 | 「げっ!「ちくりんのしちけんじん」かと思ったら「ちくりのしちけんじ」ですかぃ.」 |
御隠居 | 「そうさな、似てるようで全く違うだろ.中国のお話と言うところまではいっしょだがな.」 |
御隠居 | むか〜し、むかし、中国に七人の優秀な刑事がおったそうじゃ. 彼らにかかると、どんな難事件もたちどころに解決してしまったそうな. 不思議に思った同僚が、何日もかかって彼らが住む奥深い山にそっと忍び込み、様子を窺ってみるとだな. 彼らは犯罪組織の密告人や情報屋を組織していたんだと. 裏社会のタレコミやチクリのネットワークじゃな. いわばチクリの達人集団だったわけだ. |
源さん | では、この彫刻はいったいどんな場面です? |
御隠居 | これか.これは「てにす」というスポーツじゃよ. |
鶴爺 | て、て、て、てにす? 今は幕末ですぜ、御隠居 |
御隠居 | チクリがばれて犯罪組織から密告人が消されるとまずいじゃろ. てにすをするフリをしながら、情報を受け取っていた.つまり「かもふらーじゅ」じゃな. |
源さん | なるほど、さすが御隠居. |
御隠居 | 浅井山の衆は犯罪のない世の中を願って壇箱に『チクリの七検事』を入れたのじゃよ.フォッ、フォッ、フォッ、 |
鶴爺 | ですが、御隠居、 それだったら『チクリの七検事(ちくりのしちけんじ)』じゃなくて『チクリの七刑事(ちくりのしちけいじ)』になっていないのはどうしてですかい. |
御隠居 | ギクッ!(一瞬動揺したが、すぐに立ち直る) さすが鶴さん、いいところに気がつきなさった. 多分、長〜い年月と、中国から朝鮮を経由してこの伝説が日本に伝わってくるうちに、間違ったんじゃろ.良くある事じゃ. |
源さん | う〜ん.また一つ勉強になりました.家に帰ったら倅たちに教えてやります. |
御隠居 | うん、うん.そうするがいい.賢い子に育つぞ.フォッ、フォッ、フォッ、 |
続く |
[尾張の山車まつり]−[今週のアングル2003]−[9] |