平成30年4月29日、半田市亀崎西組様のご好意で上山からくり人形(山人形)の稽古の様子を取材させていただきました。
亀崎西組の上山からくり
亀崎潮干祭で演じられる西組の上山からくりは『桜花唐子遊び』です。
桜木から下がった綾(あや)に唐子人形が手足を交互に掛け次々に渡っていくもので、「綾渡り」と呼ばれるからくりです。
その操作は桜の木の中を通した糸で綾棒を回転させることによって行われます。
つまり人形本体を直接糸で操ることなく人形を操作する、いわゆる「離れからくり」に分類されます。
尾張地方の山車からくりには多くの種類があり、大まかに糸で人形を直接操作するからくりと、今回紹介する綾渡りのように操作系から独立し、あたかも人形が自ら動いているかのように思わせる離れからくりがあります。
いずれのからくり人形も意のままに操るには熟練を要し、稽古を積み重ねて初めて操ることができるようになるものです。
綾渡りのからくりは尾張地方では名古屋市中川区戸田、犬山祭、一宮市石刀、津島秋祭り、知多市岡田、県外では高山祭が著名で難易度の高いからくりとして知られています。
これら各地に伝わる綾渡りのからくりは数多い山車からくりでも動きのダイナミックなことで人気が高い出し物の一つです。
さらに、西組の綾渡りが特徴的なのは綾の数が7本と多く、更に途中で進行方向が途中で90度変わることから更に見応えのあるからくり演技となっています。
さて、この西組のからくりはいつ頃から演じられていたのでしょうか
『尾張名所図会附録ー小治田之真清水(おわりだのましみず)』に弘化5年(1848)と推定される祭礼の様子が描かれています。
そこに綾渡りと思われるからくりが確認できますので、亀崎西組の綾渡りは弘化5年には存在していたと思われますが、それ以前のことは不明です。
時代は下がり、いつ頃からか破損して途絶えたままだった綾渡りのからくりですが、昭和49年(1974)に残っていた古い親木などの部材を元に手を加え、また一部は新たに制作して復活しました。
当時は桜木が現在より前方に位置し、人形方は桜木の後方に2名が並んで操作していました。
平成16年の祭礼より桜木を上山内に移動し、操作を下から行う方法に変更されました。
これによって下から見えていた人形方が姿を消すことになりました。
現在の桜木は平成22年(2010)に復元新調されたもので、自然の曲線を活かした桐材で制作されました。
綾渡りに使用される唐子人形二体の作者と製作年は不明ですが、昭和49年(1974)の復活時より使用されているとのことです。
また、この唐子人形2体は次年度までに復元新調に向けて準備が進められています。