それは3日のお昼頃だったか、 山車は浜辺から曳き上げられ海浜公園に整列しており、人々はからくり人形を見たり、芝生で昼食のお弁当を拡げたりして束の間の休息を取っていた.
どこからともなく『バナナだぁ』、『バナナ仙人が現れたぁ〜』と口々に叫ぶ声が聞こえてきた.
押っ取り刀で駆けつけた傀儡組の頭役が見たものは・・・
5台の脚立(きゃたつ)となぜかその上に1本ずつ乗せられたバナナ
傀儡組の過睡眠筆頭が思わずつぶやく『バ、バナナだ・・・』
当たり前である.決してリンゴではないと突っ込みたいが、当人はそれどころではない様子.
近くの頭役も駆けつけ現場検証と臨時捜査会議が始まった.
「これだけではバナナ仙人が現れたという事にはならないのでは?」
「椅子が5つあるということは、今回もバナナ仙人単独ではないのか?」
「いや、一人だと思うぞ、影武者バナナが存在するという説もあるがな」
「ここで物騒な会議でもしていたのだろうか?」
「バナナはバナナ仙人からプレゼントなのか?」
「ワナかもしれない、触らない方がよかろう」
第1発見者の青年が尋問にかけられたが、「私はたまたま通りかかっただけ」との弁.
所持品検査でも不審物は見つからず、濱田マリのCDが数枚バッグに隠されていたのが発見されたのみだった.
いや、濱田マリ自体十分怪しいだろう(と私は思うのだが)
案の定、捜査中の頭役の一人が食いついた.
「なんだこの浜田麻里のCDは!」
青年は反論する.
「浜田麻里じゃない!濱田マリだ.一緒にしないでもらいたい」
別の頭役が「浜田麻里も濱田マリも怪しい!」
「いや浜田麻里と濱田マリは明らかに違う!私は濱田マリに命をかける」青年が食ってかかった.
その剣幕に頭役筆頭が間に入って「まぁまぁ、良いではないか」
「良くはない、ハッキリさせてもらおうじゃないか」
論点がハッキリしなくなって、結局この青年は無罪放免となったが.
傀儡組の頭役も甘いのう・・・
私は知っている.
この5台の脚立の一つがこの青年のものだと言う事を.
※毎回『青年』と呼ぶのも変なので、以後『青年』ではなく『ハマ溜まり』と称する.
称するなどと気取って書いたつもりだが、なぜか今回のシリーズではこれ以降ハマ溜まり君は登場しないといういい加減さである.
ここでやっと、準主役カメ仙人が登場した.
遅きに失した感があるが、いまや筆頭を降りて後見となったカメ仙人であるから悠々と現れるのであった.
そのカメ仙人はバナナ仙人が現れたと聞いて代参元である一番組の筆頭に協力を依頼したのだが・・・
「我が組はバナナ仙人とは関わりたくない」
なんと一笑に付されてしまった
だが、その程度ではへこたれないカメさんであるからして、今度は隣組の石鹸組に協力要請と相成った.
石鹸組の頭役は一言「合点承知!」
ただ・・・頭役の笑い顔がいささか気になるが、とにかくこれで傀儡・石鹸両組の「儡鹸共闘」が実現したのである.
著者注:これが石鹸組にとって苦難の始まりだったとはまだ誰も知らない・・・・
しかし貴重な資料映像である.
よくみると、この時点で脚立が3組に減ってしまっているのだ.
すでに2人が暗躍動き出したということなのだが、これは背を向けているカメ仙人の失態といってよいだろう.
彼の役は「後見」である.後を見なさいって・・・