[横須賀まつり訪問記]−[9] | |
〜第9回〜 |
やがて、大門組の山車も漸くのこと蔵から離れ、山車一輌がぎりぎり通れるやうな狭い路地を、法被を着た子供たちによつて「ワツシヨイ、ワツシヨイ」と曳かれてゐつた。 小僧は暫くの間大門組の山車の後に附いて行くことにした。 「ううむ、街全体がそれらしい雰囲気になつてきたぞ」 「いいぞ、いいぞおお!」 「くわんぐら、くわんぐら・・・くわんぐら、くわんぐら・・・」 大門組の山車は、町内のここそこで三番叟のからくりを演じながら、ゆつくり街の中を練つて行つた。ここのからくりは、人形を動かす人の技量が卓越してゐるやうに見える。(他が下手といふわけではない) 特に、人形が社に変身するところの、素早くてスムーズな流れは見事な操作と言つてよい。 余談だが、犬山お城まつりでの玉屋さんたちによる三番叟のからくりにも感動した小僧だつた。その道のプロとは云え、その人形の繊細で優雅な手足の運びを表現する操り方は、正にひとつの芸術だつた。操つてゐるところを裏から覗けたのもよかつた。 が、そこは悪戯好きの小僧、人形を操つてゐる玉屋さんの脇の下をコチヨコチヨくすぐつたのだが、そんなことには動ぜず※1、一心不乱に仕事に専念する玉屋さんだつた 小僧が感心しながら大門組のからくりを見てゐると、曳き綱を置いて休んでゐる傍らの子供たちにお菓子や飲み物が配られてゐる。 妖怪の中でも飛び切りの食いしん坊の小僧のこと、それを見逃すはずがない。配つてゐる若衆に近づくなり、 「オイラにもくだせえ」 と、ちやつかりとスルメイカを紙皿の上から鷲掴みに頂くと、唖然としてゐるその若衆に、横着にも、そのうえ缶ビールをねだり出した |
nova注: ※1 いやいや、実は動じていたのだった. 偶然私もその現場にいて、師が操っているのを眺めていたのだが、何やらクスクス笑っているのだ. 理由が判らず薄気味悪かったのだが、そうか小僧がくすぐっていたのか.... 納得である. 犬山にてnova写 |
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