「ストトントントン、ヒーヒヤラ ヒユ−イヒユ−イ、ドーンドンドン・・・・」 |
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「くうー、こたえられないなあ。このお囃子こそオイラの強壮剤、体の芯まで熱くなつてきたぞおお」
「おおつ、山車を持ち上げたぞ、しかも前楫4人で」
「ううむ、これがいわゆるドンテンといふやつだな」
「本星崎では十数人で担いでゐたのに、まあ、その時はみんな酔つ払つてはゐたが、ここの楫方さんはエライ」
「掛け声も格好も決まつとるでないかい。腰に巻いた大きな帯もイカシてるし」
「おーい、頑張れええ〜」
そうそう、その調子、その調子〜」 |
蔵の前でのドンテンが終わると、山車は街の中へと練り出した。
「ワツシヨイ、ワツシヨイ」と、山車を引つ張る子供たち、デジカメやビデオカメラを片手にそれを見守るママさんたち、そしてカメラ小僧のお兄さんや小父さんたち
などと一緒に小僧も
「くわんぐら、くわんぐら・・・くわんぐら、くわんぐら・・・」
と、お囃子に合わせて踊りながら附いてゐつた。
山車はその存在感を誇示しながらゆつくりと進み、常滑街道へ出た。ところが思わぬ障害に遭遇。といふよりある程度予想できたことだが。
山車は屋根が電線に引つかかつてしまつて前に進むことが出來ない。
電線マン(ホントにそう呼ぶの?※1)は細長い棒を使つて、それをしのごうとするがなかなかうまくゐかない。
「ううむ、なるほど、これもこの祭りの見どころの1つか」
「しかし、悪戦苦闘してゐるでないかい」
「よおおし、オイラが助けてやる」
小僧はササーツとそばの電柱に駆け上がると、スルスルつと電線のところまで登り、山車の屋根に向かつて伸びてゐる電線を引つぱつて山車から離そうとした。
が、電線は離れるどころか、屋根や電線マンを巻き込んでこんがらがり、かえつて山車をそのまま立ち往生させてしまつた。
「オイラ知ーらないつと」
その場を一目散に逃げて行く、あまりにも無責任な小僧だつた。 |