美濃の山車まつり紀行
   〜久田見祭り

文・写真:古伝馬

毎年4月第三土曜日曜日 神明神社、白髭神社の祭礼

天正18年(1590年)から ととても歴史の長いお祭りです。犬山から八百津を抜けてきつい坂道を登ると、突然家並みが現れます。とても山奥に来たと言う感じですが、意外とかなり大きな町でした。
八百津と同じだんじりと呼ばれていますが、形はかなり違います。全部で6両あるんですが車輪はすべて二輪です。
高欄から上がせり上がるのと固定されているのが三両づつで、黒い漆塗りと白木のままのも半分づつです。
久田見町といってもかなり広い範囲の区域で一緒にやられている祭りでこれは町内の事情によるものだそうです。
彫刻はかなりすばらしいもので屋根の上にはすべて金シャチが載っています。

久田見祭りの一番の特色は「糸切りからくり」と呼ばれる人形からくりです。操作する部分と人形が直接糸でつながっていないからということです。
「おおひ」(うけひ)という台と、その上に載る「碁盤台」とさらにその上の人形の載った「カラクリ台」の部分がばらばらになり、人形と台が糸でつながってないことを観衆に見せ、無言で表明しているのでしょう。
碁盤の足四本に動きを伝達する機構があるようですが、各組絶対秘密らしく見せてはもらえません。
どうも中に歯車が入っていてそれを連結させてからくりを動かしているようです。
部品は常に布をかぶせて移動し、見ることはできません。実のところ、仕組みはよくわかりません。

このからくりは、なんと毎年地元の町内の若い人達(祭典方)が新しく作るのです。
祭りの当日までは厳粛に秘密が守られ本楽の午前中は神明神社、午後には白髭神社で披露し、同じ演技を行います。
毎年新しいからくりを作るということは大変なご苦労だと思いますよね。
糸切りからくりは国の無形民族文化財になってはいるのですがなにせ毎年新しく地元の人達で作るわけですから、努力は充分認めるのですが、ボール紙やプラスチックで作ってある分、尾張の山車カラクリを見てきた人にはちょっとツライものがあるのじゃないかな?と思いました。
決して完成度が低いわけではないですが、どうもねえ。
今年(2004年)の出し物は「岩見重太郎のヒヒ退治」「さるの木琴演奏」「ニモ」「だるま落とし」「うさぎと亀」「猿回し」 でした。
それぞれアイデアをこらしていてとても素朴で伝統を感じます。

「祭り神事規約」というのがあって、他の地区ではありえないですが、祭礼中は禁酒だそうです。古い形を忠実に守られているようです
でも、最近は子供の減少が原因なんでしょうか、女の子もおはやしに加わっています
八百津と同じく坂道ばかりで道も狭く、だんじりはさほど大きくはないのですが二輪ではないととても運行出来ないそうです。確かに二輪ですと角を回るのも楽そうです。
見どころはもちろん糸切りからくりの奉納です。
特に神明神社はみごとな劇場スタイルになっていて階段状になった神社前の観客席前に六台並ぶとみごとに目の前でからくりが見えるようになっています。
神明神社から白髭神社へ行く道は広い田園地帯の絶好のロケーションです。
6台が並んで進む姿をみると200年、300年前と同じ景色とはいかないでしょうが、昔を思い起こされる景色でありました。
祭礼のしきたりにのっとった、とても整然としたいいお祭りです。獅子舞がとてもすばらしいです。
酒臭くないまつりもいいもんです。

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