『木偶の棒』.木偶(でく)は人形のこと.(ここでは特にからくり人形をさす)
木偶を扱う棒だから「木偶の棒」.業界用語では「サシガネ」と呼ぶ.倒立などの離れからくり系の人形戯で、糸で操作が不可能なときに、これを人形の胴に刺して手足を遠隔操作する仕掛けである.
『でくのぼう』は役に立たない人や、気のきかない人の事.他人から「でくのぼう」と言われ怒らぬ人も居ないだろう.
この場合の「でくのぼう」は『木偶の棒』ではなく、『木偶の坊』と書くのが正しい.
いくら役立たずでも、棒きれと一緒にされては、更に怒りは倍加するであろう.
ならば、『犬に歩けば棒にあたる』も「坊にあたる」ではないかと思うのだが、今回とは関係ない話.
阿部晴明など陰陽師が自在に操った「式神」は木偶で、杖のような棒だったと何かの本で読んだことがある.阿部晴明は『木偶の棒』使いの達人だった事になる.
『木偶の棒』は熟練すれば、人形を意のままに操る事が出来るのだが、『木偶の坊』はいつの頃からだろうか、操られるのがイヤになってしまったようで、箸にも棒にもかからない人物を指すようになってしまった.
『棒』も『坊』も自在に操れたらさぞかし面白いだろうて...... |
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