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北町山車と瀬川治助

 高欄下の山車四周を囲む支輪彫刻は「親子獅子」や「獅子と手鞠」などおよそ30体の唐獅子.変化に富んだ表情や姿態がヒノキ材に黒漆と一部を金箔で仕上げられている.本町組の山車同様に山車本体と出高欄の段差を支輪彫刻の量感で調和させている.
この獅子は瀬川治助重定の作で、彫刻裏に「瀬川 治助」、「尾州名古屋彫物師 瀬川治助重定藤原 重定」等の刻銘から確認出来る.
この彫刻の制作年を示す銘は見られないが、山車の建造年とされる文政10年(1827)前後と推定していいだろう.

 前棚部の彫刻「老松」はケヤキの素木彫りで瀬川重光の作と思われる(未確認).比較的狭い上縁と地覆の間を量感あふれる松で展開する手法は、同じ瀬川重光作である常滑市大野の唐子車の支輪彫刻とは異なる.
この老松の制作年も確認出来ていないが、北町組に保管されている「紀念山吹神事係事務所増築」によると元治元年(1864)の項に「彫物師 名古屋末廣町 瀬川治助重光」の名が見える.上記の老松はその時点で追加されたと思われる.

※参考までに
唐獅子と狛犬(コマイヌ)は似ているが同じではない.唐獅子は中国から伝わった霊獣でその原形はライオンだという、その中国にはシルクロードを経て西域よりもたらされ、聖域の守護として、また仏教では文殊菩薩の乗り物とされる.往古より日本では猪(イノシシ)や鹿をシシと呼んでいたため、中国(唐)から伝わった獅子を唐獅子として区別したという.
一方狛犬(高麗犬)は朝鮮より伝わったとされるが、その基モデルはやはりライオンである.獅子と狛犬の最も大きな違い角(ツノ)の有無である.獅子にはツノがないが、狛犬にはツノがある(例外もあるようだが)

支輪彫刻「唐獅子」

支輪彫刻裏の刻銘

紀念山吹神事係事務所増築

壇箱彫刻「老松」
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