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水引幕・本町組

 遠くに見える山車が、どの組なのかを見分けるには、水引幕で識別するのが最も簡単な方法だろう.
山車の一番見栄えの位置に豪華な刺繍、あるいは錦織の幕で飾るのは、山車彫刻に重きをおかない名古屋型では、からくり人形と水引幕は自己主張出来る重要な要素でもある.


手前がコウノトリで奥が鶴
・本町組山車「松に鶴の群飛」
 白羅紗地に飛翔する鶴と鸛(コウノトリ)の群れ.そして金糸で松を刺繍した清楚で格調高い水引幕である.
古来より日本では、松・鶴いずれも長寿・吉兆の象徴として馴染み深く、花札にもその組合わせを見る事が出来る.
松や鶴を意匠とした水引幕は尾張系の山車の水引幕としても多く見られるが、松と鶴を組み合わせた意匠は案外少なく、この本町組だけである.

 一部の資料には「鶯地に松上の鶴」とされているが、これは誤りで、松の上(枝)に鶴が描かれているのではなく飛翔しているのである.
 日本画などで、松の枝に鶴が留まる光景や巣作りの様子が描かれているが、鶴は本来松の木にはとまらないらしい.ましてや松に巣など作らないそうであるから絵に描かれる「松上の鶴」はウソということになる.
 なおかつ鶯地でもない.鶯色は全然別の色である.これらはどこで勘違いしたのだろうか、保存会発行のパンフレットなど多く引用され更に誤りを流布しているのは困りものである.

 左右後面合わせて13羽のうち鶴が9羽で、鸛(コウノトリ)が4羽混じっている.コウノトリは漢字も鶴に似ていて紛らわしいが、種も生態も異なる別種だそうだ.描かれた鶴とコウノトリは容易に見分けが付くだろう.
 コウノトリは江戸時代以前には日本全土に広く見られたらしいが、明治維新後に狩猟が解禁され絶滅寸前になったが、現在では特別天然記念物と国内希少野生動植物に指定されている.
  なぜ、鶴の群れにコウノトリが混ざっているのだろうか.コウノトリは子孫繁栄の象徴というからだろうか.いずれにせよ、鶴の水引幕で鶴の群れの中にコウノトリが混じっている例は多い.知多半島周辺でも、緑区鳴海町丹下、半田市板山大湯組「花王車」、上野間四嶋組などの水引幕にも鶴の群れとともにコウノトリが描かれている.
これらの下絵はすべて名古屋の絵師森高雅が描いているのだが、残念ながら当本町組の下絵の作者は不明である.
平成8年修復
水引幕は左・右・後3枚に分割されているが、その境目が目立たないよう、工夫されており、他組に見られる房飾りはない.
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