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猩々緋


東照宮祭・宮町「唐子車」
 山車に飾る赤い幕を「猩々緋」という.鮮やかな朱色でやや黄色みがかった色の事である.
猩々は、尾張地方では鳴海・大高など名古屋南部から東海市北部の祭りにも登場するが、中国の想像上の怪獣である.猿に似て体は人に近く、声は子供のようだという.毛は長く朱色で、人の言葉も理解でき、酒を好むと書物にある.
 猩々緋は、江戸時代に南蛮(ポルトガル)から輸入した毛織物で.この猩々の血で染めたと信じられていたという.実際は虫(カイガラムシ」から採った染料で染めたらしいが、その神秘性から霊力を感じたのだろう.
 現在尾張系の山車幕は大半が赤色であるが、戦災で焼失した名古屋の東照宮祭など古い写真や絵図を見ると、山車幕は赤無地ばかりではなかった.
 ここでは詳細は述べないが、天保6年(1835)に若宮祭福禄寿車が祭り好きで有名な尾張十代藩主斉朝公より猩々緋の大幕を拝領したのを機に名古屋近郊の山車に猩々緋の大幕が流行となったという.(名古屋市教育委員会発行「名古屋山車調査報告書2」)


本町組[菊菱

公通組八公車[揚羽蝶]

北町組[桔梗]

大門組[波文様]
横須賀の山車もご存じのように猩々緋である.この赤幕遠目にはわからないが、近くで見ると縦に縫目 がある.一定の規格で織られた生地を山車の寸法にに合わせて仕立てる為なのだが、半田などでは一見1枚の大きな生地に見える幕がある.
これは、実際には特殊な技法で縫目を見えなくしているだけなのだが、手間が掛かるだけにおそろしく高価である.

 赤幕は前後左右4枚に分かれており、山車本体の金具に固定し、幕の合わせ目は房で留める.これらは各組で異なり差別化されている.
 本町組は水色の房で、前部の左右は房が2段、後部は1段である.(計6個).北町組、公通組八公車も数は本町組と同じだが、房の色はそれぞれ黒と黄緑である.
公通組圓通車(白房)、大門組(黒房)は前後ともに各1個(計4個)の房で飾られる.房は名古屋型、知多型では白や黒が多いようだが、本町組の水色や八公車の黄緑は珍しいのではないだろうか.
 公通組の圓通車と八公車の後部房は結び目が2段になっている.

 この房が幕に取り付けられる部分に飾り金具がある.本町組は「菊菱(キクビシ)」、北町組は「桔梗(キキョウ)」、公通組八公車「揚羽蝶」、同圓通車「菊紋」、大門組波文様」である.


本町組

北町組

公通組八公車

公通組圓通車

大門組


 余談だが、横須賀型の山車の特徴として、前部が閉じていることは、前に述べた.
その為に山車内部に閉塞感が生じるのだろう、前の幕を端折った光景を多々見かける.
 これを見苦しいと思うのは私だけではあるまい.暑いのは理解できるが、ご一考願いたいものである.

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