尾張の山車まつりへ [どんてんぐるま]−[狸が化かす]

狸が化かす


公通組の小鼓
 名古屋系の山車囃子は能楽が基本となっているが、その能楽に使用される楽器は四拍子(しびょうし)といわれ(能管)、小鼓(こつづみ=おおかわ)、大鼓(おおつづみ)、太鼓(締太鼓、小太鼓)の4種からなる.
横須賀の山車囃子では能管(公通組と大門組は龍笛)、小鼓、小太鼓は同様な楽器を使用し、これらに、平太鼓(本町組は長胴太鼓)を加える.
 名古屋市内の山車祭りでは、夜ともなれば摺鉦を加え「七間町崩し」などの戻り囃子が演奏される.

 横須賀では摺鉦は使われないが、本町組は本楽の夜になると楽器の編成が一部変更になる.提灯を飾った山車が愛宕神社を出発するときに観察するとわかるのだが、昼間小鼓が座っていた場所には小太鼓と笛が座る.つまり小鼓が無くなってしまうのである.
 聞けば、小鼓の皮は狸(たぬき)の皮で出来ているので、夜使うと狸に化かされるのだそうな.
狸に化かされるとは面白い話だが、いかにも眉唾な話である.
それで、調べてみたら小鼓の皮は狸でも狐でもなく馬の皮だそうな.

本町組夜の囃子方
いつ頃から今の状態になったのかは不明だが、大方夜になると酒に酔いつぶれて楽人が足りなくなってしまった苦肉の策なのだろうか.
あるいは、好意的に考えるなら1日打ち続け、手が真っ赤に腫れ上がった小鼓方をねぎらう意味で、夜はご苦労様なのか.
いずれにせよ、狸とはなぜか微笑ましい言い訳ではあるが、他の組には狸は出没しないらしい.

 他にも終日小鼓を省略した囃子編成をとる地区は多い.東海市大田もそうだが、特に知多型の山車祭りには小鼓は編成されないが、武豊の長尾や大足では小鼓が使用されている.
犬山、津島、名古屋市筒井町湯取車、常滑市大野など名古屋系囃子を伝える地区も現在では使われていないようである.
音圧の高い大太鼓や小太鼓のリズム楽器、旋律を奏でる笛を省略する訳にはいかないが、小鼓なら影響が少ないのだろう.
しかし、小鼓の奏でる間合いや音色は山車囃子を表情豊かにする重要なパートだと思えるのだが.
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