08.07.17修正
山車の名前
横須賀の山車には名前がない.なぜ名前が無いのだろうか.
名古屋城下の場合,それぞれ七間町「橋弁慶車」,大久保見町「福禄寿車」のように,からくり人形の題材や大将人形から名付けられている.
「東照宮祭」「若宮祭」など多くの見物人が集まるまつりでは,便利で判りやすかったであろう.
また,三之丸天王祭の見舞車は,那古野村や広井村(ともに現名古屋市中村区)などから最盛期には16台も集まったという.これまた名前がないと不便である.
横須賀の場合は狭い町方地域内を曳き廻している,山車幕に町名などの刺繍もないことから,これらは周知の事実として名前など大して重要でなく,必要もなかったのかもしれない.
他にも山車名のないところは,お隣の大田まつり,大府などで,名古屋では中川区戸田などもからくり人形はあるのだが山車名はない.
名前はないと述べたが,実は北町組の山車には「楓童車(ふうどうしゃ)」という名前が付いている.あまり使われないのでご存じない人も多いだろう.
「楓童車」の「楓」は「カエデ」である.植物分類上は「紅葉(モミジ)」と同じ種類なのだそうな.
現に楓(カエデ)と紅葉(モミジ)は英語ではともに同じ「メープル」で区別はされていない.
一説にはカエデのなかで鮮やかに色づくものをモミジというらしいが,北町組の場合は紅葉していてもカエデらしいのである.
ちなみに山車の上にあるカエデは,季節柄もちろん作り物である.
楓童車の由来は,その楓の木に唐子(童)が倒立して太鼓を叩くからくりから名付けられたと思われる.
同様なからくり人形が常滑市大野の橋詰町にある.こちらの山車は「紅葉車(こうようしゃ)」というが,人形作者も楓童車と同じ5代目玉屋庄兵衛で,太鼓ではなく鉦を叩く.
横須賀の山車に試しに付けてみると次のようになるだろうか.
本町組 司馬温公車
大門組 三番叟車
八公車 唐子車
圓通車 弓童車
やはり,横須賀の山車は名前などなくても良いかもしれない.