尾張の山車まつりへ [どんてんぐるま]−[大門の房飾り]

  大門の房飾り

 大門の前房を見ると,キラリと光るものがぶら下がっている.L字型をした金具で、巻き上げた御簾を固定するのに使われるものである.山車関係では,知多型の前檀の御簾に同じものがみられる.
大門組に尋ねたところによると、幕をクルクル巻いてこの金具で留めるのだそうな.
さぞかし風通しが良くなって明るかろうと思う.現実に横須賀の山車は前が閉じていて通風が悪く,しかも最奥部は薄暗い.

 話を戻すが、布の幕を巻いてあの金具で止めるのは,少々物理的に無理があるのではないだろうか.
実際試したことはないが,幕を下からあの金具の位置まで巻いていくと、かなりの太さになるであろう事は大体想像がつく.多分金具の幅には収まりきらないほど太くなるだろう.
仮に金具で固定出来たとしても,多分金具部分から両端は幕の重さでダラリと下がってしまうだろう.


知多市新舞子・松原の山車
 ゆえに,私としてはこの「幕を巻き上げて留める金具説」は却下したい.
替わりに「前面御簾飾り説」はどうだろうか.松原村(新舞子)の山車は前が御簾になっている.(右写真参照)
 また,津島秋祭りの山車の中には,赤幕の代わりに後部を御簾で飾っている山車がある.(写真下左)もちろん御簾を巻き上げる際にはこの金具で止めているのである.

 房を新調するときに間違って御簾用の房を調達・流用した事から始まったと考える事も出来る.
案外これが正解なのかも知れないが,本当のところは誰も判らないようだ.まあ1台だけ変わった房だと自慢は出来るということ.
蛇足だが,現在の金具はごく薄い金属板であり,実用的なものではなく形骸化した飾りとなっている.当初の意図と離れても.今だに意匠だけがそのまま継承されているのだろう.

亀崎・中切組「力神車」

津島七切・麩屋町「神子車」
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