東海の山車祭り

第5章 東海地方の山車の形式 (1/6)

東海地方の山車の特徴は、その数が多いことに加え、山車の形態、装飾、芸能などが非常にバラエティに富んでいることである。尾張周辺には名古屋・東照宮祭の影響を受けた山車が広く分布しており、名古屋型犬山型知多型挙母型大垣型高山型など複雑に分化している。
これらの中には、からくり人形に力を入れるもの、彫刻や掛物に優れたものなど様々な趣向がこらされている。

一方、三重県北部には石取祭車鯨船という特異な山車があり、また関西と接する地域には京都祇園祭を真似た京都型、子供歌舞伎の長浜型など関西系の山車が見られる。

一つの地域に、これだけ様々な形態や性格を持った山車が見られる例は珍しい。この章では、中京地方にある様々な山車を形態分類し、その特徴について説明する。

(1)中世の山車の形式

1.大山

室町時代に出現し、かつて中京各地に見られた巨大な山車。櫓を数段に組み、松の木を立て、社殿、龍の作り物、操り人形を乗せる。
車楽と一緒に曳かれることが多かった。現在はほとんど残っていない(第4章で詳しく述べた)。

2.車楽

大型の二層式山車に囃子方と踊り手(稚児)が乗り、屋根上に能人形と松の木を立てる。陸上のものと船上に組むのものとがある。
代表例として津島天王祭の車楽(船上)があげられる(これも第4章で説明した)。


46大山 御嵩町蟹薬師祭礼

47車楽 菟足風祭・宿の山車

3.巻藁船


48巻藁船 津島天王祭

津島天王祭(写真48)の宵祭の車楽の飾りつけをこのように呼ぶ。車楽の屋根上に竹竿で365個の提灯をつけて半球形を作り、その上には柱に沿って12個(旧暦の閏年には13個)の提灯をつるす。

津島の他に、須成天王祭(愛知県蟹江町)、菅生祭(岡崎市)、ちんとろ祭(愛知県半田市)、大野祭(愛知県常滑市)などに見られる。  

また、洲崎天王祭(名古屋市)、清洲天王祭(愛知県清洲町)、下一色天王祭(名古屋市)、渡島水神祭(岐阜県川島町)など、廃止または中止されているものも多い。

津島天王祭、須成天王祭以外は宵祭りのみで、朝祭り(人形山)は行われていない。津島を真似て始めたケースがほとんどで、中世にさかのぼるものはほとんどないと思われる。


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