東海の山車祭り

第1章 山車祭りの魅力(4/4)

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 以上、山車祭りの面白さについて思いつくままに述べてきたが、さらに、二点をつけ加えたい。
 まず、山車の数についてである。東海地方で最も多く山車の出る祭りは桑名石取祭の39輌である。祭車は小型ではあるが、その行列は1キロメートルにも及ぶ。この他では、
11 犬山祭
12 はんだ山車まつり
島秋祭(15輌)、犬山祭(13輌)(写真11)高山の山王祭(13輌)などが多い。また、愛知県半田市では5年に1度、市内にある31輌の山車の勢揃い(写真12)させるイベントを行うことになっている。(ちなみに日本一はおそらく愛媛県の西条祭で、100輌以上の山車が出る。)

 最後に山車の大きさについて比べてみよう。東海地方の山車で特に大きいのは、津島天王祭の車楽(だんじり)と犬山祭の車山(やま)である。津島の車楽は、朝祭では約8メートル、真柱を立てる宵祭では約15メートルの高さにもなる。かつて東海地方には「大山」、「車楽」と呼ばれる巨大な山車がたくさんあった。しかし、明治以後ほとんどが廃絶し、かろうじて船上に組まれる津島天王祭の車楽のみが残った。一方、犬山祭の車山は8〜9メートルの高さがあり、地上のものでは一番大きい。犬山城前の広場に13輌の高大な車山が勢揃いする様子は壮観である。ただし、一宮市馬寄や、岩倉市の犬山型山車も同様の大きさがあり、もしかすると岩倉市の山車の方が犬山のものより大きいかもしれない。これらの正確な大きさは、調べればわかるかもしれないが、不粋なのでやめておく。山車の大きさや重さは、各町の自慢であり、みんなで「うちの山車が一番大きい、重い」と自慢し合っているのがよいのである(日本最大の山車は石川県七尾市の青柏祭。ただしこれは体積日本一で、背の高い物は他にもある)。

 東海地方の山車は、数が多く、しかも江戸時代のすぐれたものが多い。そして、その装飾や芸能の内容が非常に多彩であるという特徴を持つ。
 愛知県には約400輌、岐阜県と三重県には、それぞれ約150輌の山車がある。山車の多いことで知られる滋賀県(注1)や富山県(注2)でも山車は約100輌であるから(この両県にも江戸時代の優れた山車が多い)、愛知県がいかに多いかが分かる。しかし、大阪府では和泉地方だけで約300輌以上(注3)、静岡県の遠江地方には800輌以上(注4)の山車があるというから上には上がある(ただし、これら2地域の山車はいずれも小型で、建造年代も新しいものが多い)。
 全国的にみると山車の集中する地方が幾つもあるが、通常、一地方の山車の型式はせいぜい数種類で、しかも同一趣向(たとえば、彫刻に重点を置くとか、曳き回しに特徴があるとか)のものが多い。それらに比べると東海地方には実に多彩な山車が見られる。まず、名古屋型から発達した山車が10種類の型式に分化しており、それらの中には、からくり人形に重点を置くもの、彫刻の優れたもの、掛物の優れたものなど様々な特色を持つ。これに加えて長浜型、石取祭車、鯨船、日野型など個性の強い山車が各地に分布している。
 東海地方はまさに山車の宝庫であり、この地方だけで日本の山車のあらゆるパターンが見られる、と言っても過言ではあるまい。こうした優れた特徴があるにもかかわらず、東海地方の山車は地元でも、全国的にもあまり知られていない。せめて地元の人たちだけでもこれら山車の価値を理解することによって、江戸時代のこの地方に豊かな町人文化があったことに気付き、さらには、もっと地元の文化を大切にしていってほしいと思うのだが。
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