東海の山車祭り

第1章 山車祭りの魅力(3/4)

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7 名古屋まつり「山車揃」

8 半田市乙川祭

9 名古屋市東区新出来町
 さて、山車の魅力として、山車の装飾、夜祭、芸能などについて述べてきたが、山車の最大の魅力は何と言っても曳き回しである。曳き回しの迫力のある祭りは、必ず面白い。

 山車を曳き回すにはその舞台が重要である。山車には、それが最も美しく見え、迫力が感じられる道幅と町並みが必要だ。どこの祭りでも、山車は江戸時代のその町の町並みと道幅にぴったりと合うように作られている(と私は信じている)。近年では、山車を町の中心の大通りに曳き出す例が多く見られるが、これではどんな立派な山車や、迫力ある曳き回しも見すぼらしく見えてしまう。特に、名古屋まつり(市民祭)(写真7)の重要文化財山車揃えは考え物である。あれではかえって、名古屋の山車は貧弱だという間違った印象を広めているのではないか。

 こうした、見栄えの問題に加え、祭りを演じる人と観客との関係も、また重要である。日本の祭りは、広い道の真ん中を行列が進み、遠くから観客が見るという性格のものではない。演者と観客が同一平面で、ほとんど混じり合った状態になって一緒に作り上げて行くのが山車祭りの特徴でもある。狭い道を山車が軒ぎりぎりに進んで来るのを壁にへばりついて見る、これが面白い。

 さて、山車の曳き回しで最も見どころとなるのは方向転換のときである。その方法としては大きく分けて、引きずって回す方法(写真8)と、前輪または後輪を持ち上げて回す方法(写真9)の二種類がある。引きずって回す例では、亀崎潮干祭、乙川祭などの知多半島の祭りや挙母祭が迫力がある。いずれも、宮入りにおいて、走りながら一気に方向を変えるところが一番の見せ場である。
 一方、持ち上げて回す例には、名古屋旧市街の祭り、西枇杷島祭、犬山祭、知立祭などがある。特に知立祭の宮入りで方向を変えた山車が、後輪を持ち上げたまま200メートルの坂を下るシーンはまさに圧巻である。なお、他に高山祭、古川祭、上野天神祭の補助輪を使う例や、高田祭、関夏祭(三重県)の台輪から上が回転して180度方向を替える例がある。

 ところで、山車の魅力でもう一つ忘れてはいけないものに、町の人々の熱狂ぶりがある。特に
10 桑名石取祭
桑名石取祭(写真10)の熱狂ぶりは有名である。この祭りには石取囃子という勇壮な太鼓囃子があって、町の人が入れ替わり立ち替わり延々と太鼓を打ち続ける。この石取囃子は極めてやかましい。それを、深夜2時に30輌以上の祭車が一斉に叩き始めると言うのだから、もう常軌を逸している(山車祭りの場合、常軌を逸しているというのは誉め言葉である)。

 挙母祭もまた常軌を逸している。古くからの風習ではないが、膨大な量の紙吹雪を撒き散らしながら進む。あまりの多さに、宮入りの際には、山車が見えなくなる。撒くというよりもむしろぶちまけるという方が正しく、祭りが終わると町は紙吹雪だらけになる。
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