東海の山車祭り

第1章 山車祭りの魅力(1/4)

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高山祭り
1 高山(八幡祭)下一之町上組「布袋台」
潮干祭
2 亀崎潮干祭田中組「神楽車」
上野天神祭
3 上野天神祭中町「其神山葵鉾」
 東海地方は山車の宝庫である。愛知、岐阜、三重の3県で合わせて約700輌の山車がある(そのうち約200輌がせまい尾張地方に集中している)。この中には、江戸時代に建造された山車が約300輌もあり、美術工芸品として優れたものが多い。しかも、からくり人形、子供歌舞伎、彫刻、染織工芸、豪快な曳き回し、熱狂的な太鼓囃子など、様々な趣好をこらした山車があり、このように多彩な山車が一地方に見られるのは、全国的にみても珍しいことである。

 もっとも、「東海地方は山車の宝庫」と言う割には、高山祭を除き、全国的に名の通った祭りはない。このため、立派な山車を持つ町の人々の中にも、「うちの祭りは有名でないから、よそから見ればたいしたことはない」と思っている人もいる。しかし実際には、山車祭りで全国的に有名なものは、祇園祭高山祭秩父夜祭の日本三大山車祭りと、博多祇園山笠青森ねぶた大阪の岸和田祭の6つぐらいしかない。これらの祭りは、いずれも日本を代表するすばらしい祭りではあるが、決して日本の祭りの中で突出した存在ではない。これらに匹敵する山車祭りが、全国各地に見られる(ただし、京都祇園祭のみは、桁違いの規模を誇っており別格である)。どうも山車祭りはどこの地方でも、その特異さ、面白さ、地元の熱狂ぶりのわりには無名のようだ。むしろ、三大山車祭りのように、全国的に知られている方が特殊と言える。つまり、有名な祭りはすばらしいが、すばらしい祭りが有名だとは限らないのである。

 東海三県(愛知、岐阜、三重)にも、日本三大山車祭りと比べても遜色のない祭りがたくさんある。まず、津島天王祭、犬山祭、桑名石取祭、上野天神祭あたりが思いつく。これらに次ぐものとして、亀崎潮干祭、津島秋祭、知立祭、挙母祭、三谷祭、垂井曳祭、古川祭なども挙げられるだろう。

 東海地方の山車で豪華絢爛なものと言えば、やはり高山祭(写真1)である。いずれの屋台も極めて精巧に作られており、そのあざやかな色彩と、装飾品の多彩さは、他に例を見ない。
 しかし、彫刻の豪華さという点に限れば、亀崎潮干祭(写真2)乙川祭が極立っている。白木造りなので高山のような派手さこそないが、全体を覆う立川流や尾張の名匠たちの彫刻はすばらしく、全国的に見ても特に優れた山車である。

 一方、染織品では上野天神祭(写真3)が優れている。幕には円山応挙、渡辺南岳など江戸時代後期を代表する絵師たちの下絵を刺繍で表現しており、山車の掛物として独得のものが多い。また、古川祭では近代の大画家による見送りの数々が圧巻である。この他、垂井曳祭の曳はその屋根の構成が複雑で、建築模型として面白い。
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