[尾張の山車まつり]−[祭吉の山車祭講座][御簾]

第21回 御簾

 「御簾(みす)」とはすだれの尊称で、神社の窓にみられます。一般の家庭用の夏の日ざ
亀崎・宮本車 亀崎・青龍車
しを少なくするためのすだれと比べ装飾的な要素があります。細い竹ヒゴをつなぎすだれ状にしたもので、錦の布で縁取りがされています。上縁には左右二ヵ所から紐が垂らされており、御簾を巻き上げた時にとめるクの字形の金具がついています。また、紐の先には房が付き、紐も上げ巻結びにするなど装飾されています。
 ちなみにこの上げ巻結びは飾り結びの一つで蝶々結びに似ていますが紐を引いても解けません。山車の幕が合わさった部分や知多型山車(亀崎等)の前壇手高欄の飾りでもみられます。東海市横須賀では正面の大幕にもみられます。
横須賀・八公
の前房

 さて、前置きが長くなりましたがこの御簾、知多型山車は前山壇箱の上、堂山に接する四本柱の間に付けられています。半田市下半田
名古屋市・二福神車
南組護王車など一部の山車には上山の四本柱を囲うように付けられています。名古屋型山車は前壇、采振り人形の後ろ堂山柱の間に付けられています。一部では幕になっている山車もあります。
 では、御簾の役割について少し考えてみたいと思います。一つはからくり人形の操り手(操者)を隠すためです。御簾は暗い方から明るい方を覗くと見えますが、明るい方から暗い方は見えません。こうしたことから、暗い山車の中からは操り手は人形が見えますが、外からは操り手が見えないのです。
 一つは装飾のためです。動く神社ともいえる山車、前壇には御弊や神鏡、御札などが置かれ、神様が祀られます。神様の居場所として神社特有の御簾で装飾したわけです。一つは明かり取りです。幕で覆われた山車の中は暗いですが、御簾を通して明かり取り入れるのです。こうした意味が御簾にはあると思います。
 それではもう少し御簾について詳しくお話したいと思います。御簾には二種類あり、その用途も異なります。一つは、窓に付けてるもの、これは紐が御簾の裏面に付きます。(御簾には表裏があり、表の方が錦の縁取り面が広くなっています。)もう一つは神社の本殿御扉の中に付けるものです。古く、高貴な人の顔を隠すため
花王車の水引幕
のものでした。時代劇などで「御尊顔を拝し…」なんて聞きますが、顔を見るのも恐れ多いということで、下位の方からは見えずにするわけです。山車の御簾はこちらの方ですね。 山車の中の人が高貴なわけではありませんが、装飾として紐を表に付けたためだと思います。実際、御簾を巻き上げて止めることはしません。しかし、人形のない山車は御幣や神鏡や神札を置き神様をお祀りします。この点からいっても、意に合っているわけですね。
 御簾といえば、半田市亀崎西組の水引は御簾の刺繍ですね。これについて少し。こちらは、窓につける方ですね。紐が裏に付いています。あと、ケチをつけるわけではないんですが、実際の御簾では紐の結び部分は見えず、房の下の方だけです。これは、装飾的に配慮して、あえて、結び部分を見せたのではないかと思います。

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